L'Anovelién

UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

SEARCH

CONTENTS
LATEST
LINK
BOOKS

RSS
COUNTER

ライトノベル創作教室ラノベりあん 中二病でも書けるライトノベル教室♪

小説の楽しい書き方講座ブログ 毎週開催の創作塾と連動中!

オフ会終えて日も暮れて

きのう無事に7月のライトノベルオフも終了しました。
今回も50人以上の参加と大盛況で、奈良、静岡と遠方の方にも参加していただきまして
主宰者として本当にありがたいかぎりです。

今回は特別講師として滝本竜彦先生にもご登壇いただきまして、魔術的瞑想をとりいれた
創作活動のモチベーションを高め、アイデア発想をスムーズにする方法を教えてもらいました。
いつもテクニック的なことが多い日昌晶の講義を補完するかたちで今後の創作活動やスランプ脱出に
役立ててもらえたらいいなと思っています。

さて私の講義のは、ほぼワークショップでグループ課題として即席の作品を作ってもらい
主に主人公の設定と、その主人公の陥る最大の危機、そしてその危機の脱し方について
8~10人程度の6班にわかれて考えてもらったわけです。

結果としては、う~ん、どうでしょうね……
どういう設定を組み込んでいくべきかということが、頭でわかっていても
まだまだ体感的に、経験則的にわかってない人が多いなというのが
講義を終えての私の率直な感想だったりします。

どういうことかいうとマインドマップ形式で模造紙に思いついたことをどんどん書きだしてもらったのですが
作品やその主人公自体にとって有益な設定があまりなくて、些末な設定に目が向いてしまっているんですね。
些末な設定というのは、極論すれば主人公の「経歴」や「肩書き」「属性」といった設定です。
ぶっちゃけて言うと、上のようなものは作品の調味料的なもので食材ではないんですね。
だから調味料ばかり集めてきても料理にならないように作品としてもまとまらなくなってしまうんです。

つまり主人公に「超能力者」という設定をつけたところで、物語はまったく転がらないんですよ。
結局は以下のようなことを深く決めていかないと、使いものにならないんですね。

「超能力っていっても、いろいろあるけどどういうタイプ?」
「その能力を使ってなにができるの? なにができないの?」
「主人公は超能力があるこをどう思っているの? 誇りに思ってる? 疎ましい?」
「主人公の力を使う基準は? どういうときに力を使って、どういうときに抑制しているの?」

最終的には超能力うんぬんの問題ではなく、主人公の性格や矜恃、行動パターンについて
設定を決めていかないと、とってつけたような設定の「超能力」なんてものは生きてこないんですね。

それよりも「どんなささいな悪をもゆるさない」という設定からスタートしたらどうでしょう?
さっきとは反対に、たったこれだけの設定で、すぐにそのまま使えるんですね。
小さな子供が万引きしているのを見つけたら、どういうエピソードになるだろうかとか
違法ダウンロードをしている友達に対して、どんな反応を示すんだろうかとか
そして、そんな性格の主人公がもし「超能力を持った」としたら、どんなことをやらかすかとかね
すぐにいろいろなシチュエーションからエピソードまでもっていけるのがわかりますか?

物語を牽引してゆくエンジンこそ主人公の性格設定なんです。エンジンのない車は走れません。
でもなぜか小説創作だと多くの人が車体のデザインやカラーリングに全力を注いでしまって
肝心のエンジンを搭載しないままの車でレースにでようとしているんですね。

どうか物語を作るときには、まず最初に調味料よりも食材をそろえてください。
車の格好いいデザインも大切ですが、まずは高性能エンジンを搭載させることに全力を注いでください。

もちろん、あなたが「塩コショウのクリームソース、シナモン添え」が大好きだったりしなければの話ですが。

私は変態らしい

きのうはオフ後の2次会以降でオールしてしまって、ブログ更新していなかったので
そのぶん本日2回目の更新となりますが、今回はアフターオフのことについて。

いつも立ちっぱなし、しゃべりっぱなしで疲れているし、翌日は予定があるなどの理由で
参加者と一緒に2次会に行く機会も少なくて、さらに徹夜のオールなんてほとんどないんですが
きょう日曜は予定がなかったこともあり、土曜から翌朝にかけて2次会、3次会と参加させてもらいました。

オフ後も終わって、三々五々にみんな解散しはじめたときに
西日本からわざわざオフのために来てくれた女性参加者がホテルの場所がわからないということで
他の参加者に「ぜったい送り狼にならないでください!」と激励を受けまして
会場近くのようで近くなかったホテルまで送っていきますと、当然のごとく誰もいません。
ああ、せっかくたまには2次会に参加しようかなと思っていたので、オフ参加者のなかでも
数少ない電話番号を知っていたS嬢に電話して、どうにか秋葉原で合流できました。

その後、終電組は帰宅しまして、最後まで残った5名でメイド喫茶で夜明かしです。
前々からオフレポの日記なんかで、毎回たのしそうなハプニングが起きているので
行ってみたかったんですよね、深夜のメイド喫茶。
そもそも深夜にやっているとか知りませんでした……
朝までやってる喫茶店なんて私が若い頃には高田馬場駅前の喫茶白ゆり(現在閉店)くらいでしたよ。
そんなことはどうでもいいですが、実は特にメイド属性のない私としては
メイドさんそっちのけでいろいろと参加者同士でたのしく会話していたつもりですw

つもりなのですが、どうやら私の話はちょっとちがうらしいのですね。
ひとりやふたりなら勘違いだと言い訳もできますが全員の総意なので否定しきれません。
「電波さんに率先してちょっかいだす」とか「池袋乙女ロードで腐女子を集団ナンパ」するとか
どうも常人の粋を越えた行為らしいのです。でも、そんなに変ですかね?
まあ、酒、煙草、ギャンブル、オタク趣味など、いっさいない私の行動原理は「女の子」だけです。
しかも二次元とかアイドルとか自分の手で触れない存在にはまったく興味がなかったりする
ライトノベル作家としてはいかがなものかというリアリストでもあるので
ラノベの主人公でおなじみのエロ少年そっくりの言動なのが、どうもイタいようですよ。

それに付き合う女の子や好きな女の子の趣味にすぐ感化されてしまう性格でもあるので
その子が好きな作家の小説とかおすすめの本とかにすぐはまるのは当たり前で
彼女にSM趣味があれば、それさえも自然と染まっていってしまったりと、
自分の趣味の歴史は自分の女性遍歴とほぼイコールだったりして人格形成にも大きく影響してるんですね。
でもSM好きの彼女との交際期間は短かったので、あまりハマらずにすみましたw
ちなみに、いまの趣味はテニミュの真似をすることです。もちろん跡部か越前役です!

なにが言いたいかというと、やっぱり変態はたのしいですよ!
しかし私は澁澤龍彦先生のファンなので、ただの「変態」ではなく
もっと衒学的に「性的倒錯者」(パラフィリア)と呼ばれたいですね。
そして小川洋子のフェティシズム小説(注1)ばりに性癖まるだしの小説を書いてみたいですね。

注1:
芥川賞作家の小川洋子さんがいかにフェチなのかについても熱く語ってしまいました。
著者近影で見るかぎり、小柄でかわいらしい丸顔の女性なのに、その性癖はきっと
『ホテル・アイリス』で描かれた少女のように現実感の希薄な男に物として扱われように責められるという
淫らな欲望を秘めているにちがいないと力説するもあまり賛同を得られなかったのが、ちょっと残念でした。

あらすじの書き方、まとめ方

【質問】
どうやっても2000字の『あらすじ』が書けません。
他のサイトでも800字のあらすじの書き方は書いてあるのですが、2000字の書き方は書いてありません。
長編小説の内容をダイジェストで書こうとすると、どうしてもオーバーしてしまいます。
掌握小説を書く要領でというヒントがあったので、そのつもりでで書いてみたのですが巧くいきません。
ストーリーを全て書くようにとのことですが、どうしても切り捨てるエピソードがでてきてしまいますし、
世界観も必ずいれるべきかどうかさえ、よくわかりません。


【アドバイス】
あらすじの書き方については、オフやブログでも何度か触れていますが、
未だ同じ質問が繰り返されるのも、需要があり、困っている人が多いということで
改めて「あらすじの書き方」を解説してみたいと思います。

まずストーリーのすべてを満遍なく書こうとするなら、それは大きなまちがいです!
そもそも原稿用紙数百枚の内容を数枚に”圧縮”するなんてことは無理な話なんですね。
たとえできたとしても、はっきり言って、そんなあらすじを読んでもおもしろくありません。
そうです! あらすじだって読んでおもしろくなければいけません!
アホな小学生の読書感想文じゃないのですから、作品のあらすじをだらだらと
時系列を追って書くなんてことは、少なくとも大人のすることではありませんよね。

あらすじを書くときに最も必要とされることは、どこが作品のウリなのかを明確にすることです。
そして、このウリを中心として最も文字数を割くことで、いかに読者の興味を惹くかが勝負です。
とはいえ、ウリの部分だけを書いてもストーリーは理解できませんから
ウリの前後をつないでストーリーの概略がなんとか理解できる最低限を書く必要があります。

当然、ウリとなるエピソード以外のエピソードがあっても省略してしまいましょう。
どうせ少ない文字数で説明しようとしても伝わるものじゃないのですから書かないほうがいいのです。
もし文字数に余裕があるならエピソードについて書くよりもキャラの魅力などウリとなる部分に
文章を費やして書いていきましょう。

ここがわかっていない、あるいは曖昧な作者ほどあらすじが書けません。
さらに厳しいことを言えば、投稿作の8割以上はそもそもウリなんて存在していません。
作者が一生懸命に探そうとしても、見つかるわけがないのです。
なぜなら執筆時点……いや、プロット段階でしっかり「俺はココを読者に読んでもらいたい!」と
明確な意志の元に執筆していない限り、そんな偶然や自然発生でウリは発生しませんよ。
まあ、多くの人は後になって、なんとかでっちあげようとするんですよね。
でも、それは悪あがきです。選考委員はそんな付け焼き刃のでっちあげに騙されることありませんよ。

あらすじがすらすら書けてしまう人というのは、自分の作品のどこがおもしろいのかを熟知している人です。
逆にどうしてもあらすじがまとまらないという人は、結局は自作品なのにどこがおもしろいのかわからなくて
とにかくあれもこれも書かなきゃという強迫観念に駆られてしまっているわけです。

もしも、あなたが最初の1行を書く前に、自分の作品のどこがウリなのか決めていなかったとしたら
残念ですが、その作品は世に認められることは、まずないでしょう。
あらすじ執筆は作者自身が作品のウリを理解していたどうかをはかる試金石となるのです。

遅筆を克服する秘訣

なかなか筆がすすまない、〆切に間に合わない、そんなブログ読書諸君も多いのではないですか?

では、いったい筆のはやい作家さんはどのように原稿を書いているのか気になるところですよね。
今回は1ヶ月に2~3冊くらいのペースで書きあげてしまうような筆のはやい作家さんに共通する
秘訣を今回は特別にお教えしようと思っています。

毎日決まった時間に原稿を書くことで習慣づける

もうね、これにつきます。
まあ、常識といえば常識ですが、これができれば自然と原稿を書くスピードはあがります。
赤川次郎先生をはじめとして、話にきく筆のはやい作家さんというのは
会社勤めのように月曜から金曜まで毎日9時から17時まで原稿を書くというスタイルがほとんどです。
習慣よりも強いものはないということですね。
1ヶ月のあいだに2冊以上、書きあげるなんていうのは専業作家の場合で
さすがに会社勤めをしている作家志望の人や兼業作家には難しいですけどね。
とはいえ、会社勤務のかたわら文庫本1冊くらいは余裕で書けてしまうんですよ。

筆がはやいのは作家にとって大きな武器です。
大ヒット、ベストセラーは運の要素が介在しますが、筆のはやさは実力オンリーです。
筆がはやければ、それだけ刊行ペースも早くなるので、印税も多くなって収入も安定します。
なにより編集者は筆のはやい作家をもっとも重宝するし、評価してくれます。
編集者としては、いつ完成するのかわからないとスケジュールを調整するのもたいへんですからね。
それに短期間で作品を書ける作家は、なにかと融通もきくし、安心できるんですよ。
作家ではないですがガンダムの富野由悠季さんはシナリオを書くのが異常に早いということで
締切に困った制作会社からの仕事が多く舞いこむようになって、それをこなしていくうちに
やがて頭角をあらわてきたという過去があるんですね。
ただし出版社としては一発屋でもいいからベストセラーを書く作家のほうが好きなんですけどねw

そして、もうひとつ大事なことがあるのですが、それは自分で考えてみてください。

筆のはやい作家は、作品を書きはじめる前には、もう(            )している。

それでは、みなさん新人賞の締切にまにあうよう原稿執筆がんばってください!

センスのないなあと思う人の傾向

これだけ創作に関して教えていると、センスのある人とない人は反応を見ればすぐに見わけられます。
今回はセンスがない人の特徴と傾向について端的に書いてみたいと思います。

◎アドバイスに対して言いわけする【センスなし度★★】

理にかなった説明で反論するわけでもなく、ただただ言いわけする人というのは
結局のところ、その場で自己保身するだけなので、創作スキルはまったく成長しません。
たいてい自分に言いわけして途中で投げだしてしまうので長編作品も書きあげられないようです。

◎アドバイスに納得せず自分の考えに固執する【センスなし度★★★】

せっかくアドバイスをしてあげても「でも」からはじまる返答をしちゃう人ですね。
これも私を説得するだけの説明ができるのならセンスがいいのですが
十中八九はたんに頑固なだけで自分の考えが根拠なしに良いと思っちゃってる人ですね。
だから、どうやってもダメなことをどうにかしようと設定をこねくり回したりして
延々と時間をとられたあげくに失敗してしまうタイプです。

◎アドバイスにとんちんかんな返答をする【センスなし度★★★★★】

正直、このタイプがいちばん困ってしまいます。
アドバイスをすると素直に「わかりました。つまり○○○すればいいんですね!」とか
言ってはくれるのですが、この○○○がこちらの意図からズレまくってるんですね。
はたして、この人は私の言うことを理解してくれているのだろうかと心配になってしまいますが
多くの場合、まったく理解していなかったことが後日、明らかになります。


さて、このブログを読んでいるみなさんには該当していないことを切にお願いします。

身銭を切る意味――覚悟はありますか?

いきなり下世話な話になりますが、人間の心は弱いものです。格好良く言うと「惰弱」ですね。
だから嫌なこと、つまらないことがあったら、すぐ途中で投げだしたり、諦めてしまうわけです。
もちろん、みなさんも経験ありますよね? 私もたくさんあります。

だからこそ人間は覚悟を決めないといけないのです。
よく政治家も「背水の陣の思いで」とか「不退転の決意で」とか覚悟を口にしますが
口だけで覚悟、覚悟というのはたやすいし、口だけの人ほど実行力がありません。

だから、どう覚悟を決めるかが重要になってくるんですね。
とはいえ作家になるために命を賭けるなんていうのは現実味がありません。
そんなことを真顔で言う人は前出の政治家同様に口だけ番長です。
では、何を賭けるかというと現実的なのは、お金しかないんですよね。
お金はいくら失っても死にはしないけど、失うのはとても嫌なものです。
だからお金を失うかもしれないとなると、人間はちょっぴり本気になれるのです。

体裁よく「自分に投資する」とかいう人もいますが、私はちがいます。
参考書を買うにもスクールに通うのも、それに費やす時間と金銭は「賭け金」だと断言します。
夢がかなわなければ、すべてが無駄になるとは言いませんが、賭け金を失うことを意味します。
どう言いつくろおうとお金を損することには変わりありません。
競馬に負けたけど、いいレースを見せてもらったよなんていうのは綺麗事の負け惜しみでしかありません。

人間は賭け金を失いたくない、何倍にも増やしたいという欲望ゆえに
自ら逃げるための退路を断って、つらくても努力してがんばれるようになるんです!
思いだしてみてください。自分の学生時代のことを。
大半の人は小中の義務教育から高校や大学にかかる学費を親に支払ってもらいましたよね。
高校無償化などの政策もありますが、大学や専門学校なんて年間の授業料は100万円からですよ。
これに下宿代だの通学定期代だの、おそらくお小遣いまでもらうといくらになると思いますか?
とんでもない金額になりますが、でも学生時代はそんなこと気にしたことないですよね?
もちろん私も全然考えてませんでしたから、いかに授業をサボるかとか、
楽して勉強したふりをしようとかしか考えてませんでしたが、みなさんも似たようなものでしょう。

授業料は自分のお金じゃないので、講義を1つサボるといくら損するとか考えもしないわけです。
ライトノベルを教える専門学校なんかでも、やはり高校を卒業して親のお金で通う子の意識が低いのは
これは人間の性として、どうしても仕方ないことなんです。
だからゴールデンウィークが終わったら、クラスの生徒数が半分になって
夏休みが終わったら、そして誰もいなくなった、なんて冗談がまかり通ってしまうわけですよ。
でも自分で申し込んで授業料を払った英会話教室の授業は、きっと学校の授業より真剣になりますよね。

日昌晶が主宰する毎月のライトノベルオフにおいて、できるだけカンパをお願いしているのも
真剣に話を聞いてもらって、そして学んだことを身につけてほしいからなんです。
経済的な事情もあるので一概には言えませんが、やはりカンパをしてくれる人の実力は平均的に高いです。
これはお金という対価を出しているからこそ、どうにかして元をとってやろうとするわけですよ。
食べ放題、飲み放題だから、少しくらい無理してもできるだけ多く飲み食いしてやろうなんていう
ときにはいやしく見えてしまう人の欲を味方につけて有効利用しているわけですね。

フリーミアム化しつつある世界ですが、やはり無料情報には無料なりの理由があるのです。
このブログも完全無料で誰でもいつでも創作技術について学べるようになっていますが
本当の本当に大事なところは、やっぱり書かないようにしています。
ときどき、クイズ形式にしているところなんかが無料では教えられない部分です。
でも最も大事なことについては、クイズというかたちでさえ書いていません。
私のことをケチ、守銭奴という人もいるでしょう。
でも逆の立場に立ってみて「1円たりとも払うつもりはないが、おまえのすべてをよこせ!」
と声高に主張してはばからない人に対しては、どのように思うのかということです。

無料情報は無料であるがゆえに便利でコストパフォーマンスに優れていますが
Wikipediaの記事を鵜呑みにしてミスや失敗する人も多いように、
無料情報を過信することなく適切な距離感でつきあっていってもらえればいいなと思います。

某マンガではありませんが「等価交換」なんですね。
もしあなたが成功を手にしたいなら、それなりの対価が求められます。
いや、むしろそれなりの対価を求められないと人はやる気を継続することができないんです。
もし嘘だと思うなら、あなたの過去をよくよく思いかえしてみてください。

第1回日昌晶掌篇文学賞 7月期選考結果発表

文学賞を創設して最初の結果発表となります。
なんと7月期の応募総数は63作品と予想を上回る力作が集まりまして
選考は大変苦労しましたが、どうにか結果をだすことができました。
引き続き8月以降も、どうぞよろしくお願いします!
それでは前置きはこのくらいにして、さっそく結果発表(敬称略)と寸評にうつりましょうね。

【金賞(7月期月間賞)】(副賞:1000円ギフト券)
『前向きにしか生きられない』 ラムネ

とても素晴らしい作品です。やはり他の投稿作より頭ひとつ抜けていたと思います。
よくありがちな設定のようでいて、あまりないタイプの発想なのがおもしろいし、
800字以下なのに登場人物たちが活き活きと動いていて、しかもストーリー構成がしっかりしており
掌篇小説にとって大事な要素である余韻があるのが青春小説らしい清々しさまであります。
なにより評価したのは、この作品の続きを読んでみたいと思わせる力でした。
これは登場人物のふたり(栄と博士)の微妙な関係、距離感が巧く描けているからでしょうね。
設定やストーリーで見せようとする作品が多いなか、人物の魅力で勝負してきたラムネさんの作品は
力作ぞろいの応募作品の中でも一際輝いて見えました。次回作も期待しています。

【銀賞】
『完全密室殺人事件』 うれま

この作品でもっとも評価したのは”勢い”です。
他の投稿作にもコメディ調作品は多かったのでが、ここまで突きぬけた作品はありませんでした。
おそらくこれを短編以上の文章量にしたら、作者を殴ってやりたくなるような作品になるでしょうが
(実際、うれまさんの書いた別作品のネタ系短編について、30分くらいダメだしたことがありまして
周りのオフ参加者には、あんなに説教している日昌晶は見たことがないと言われてしまいました)
掌篇小説という規定においては、ハリセンの一撃のような痛快さになるんですね。
どちらかというとショートショート小説のジャンルに当てはまる作風でしょうか。

【佳作】
『格子の中』 はら
『ドクシャ目線』 時雨日暮
『響音』 葉桜
『悪党』 ledpink
『恋するゾンビのラプソディー』 ミカ
『980円の魔法』 ゆん
『黒い魔王』 ゼミ長
『どっち』 A
『初めてと幸せと』 けいぶん
『花火』 はじめ
(以上10作品、投稿順)

『格子の中』は叙述トリックとして正当派的な作品でよくまとまっていました。
『ドクシャ目線』はラノベ読者、作家志望者ならきっとおもしろく読めるでしょうし
実験的作品としても評価したいと思います。
『響音』と『恋するゾンビのラプソディー』は、発想などとてもおもしろいんですが
最後の最後でオチをどうにかしようとして読んでいて無理さ、強引さがでてしまいましたね。
逆に『980円の魔法』は終わり方はいいんですが、途中で980円というのがネタバレしてしまっているので
そこを巧く回避できていたら、もっと上にいけたと思います。
『黒い魔王』はネタとしてはよくあるものなんですが、ラノベ独特の語彙や言い回しを多用した文章が
楽しめる作品に仕上がってよかったと思います。
『どっち』は哲学的なテーマの意欲作でした。惜しむらくは主人公の葛藤をもっと描いてほしかったです。
『初めてと幸せと』と『花火』は、どこかで見たことのあるようなオーソドックスな構成であるんですが
それだけに読み終わったあとに余韻を残してくれる秀作だったと思います。


《総評》
今回ははじめての投稿ということになりますので、どんなものを書いたらいいかわからず
どうしても躊躇してしまった人も多いのではないでしょうか。
投稿作品の中でも特に多かったのが「なぞなぞ」系とでも言える作品群でしたね。
最後に謎解きが示されていて、読み終わった後に謎がとけるみたいな作品なんですが
なかなか効果的に生かし切れている作品が少なかったように思います。

反対に散文詩のような叙情的な作品についても、やはり説明不足になってしまって
読者が共感できるところまでいっていなかったのが印象的でした。
感動ものというのは感情を昂ぶらせる”前置き”のほうが大切で
ダムにたとえるなら前置きで充分に貯水しておいてクライマックスで一気に放流するわけですが
クライマックスだけだと、水もちょろちょろと出るだけになってしまうんですね。
やはり掌篇小説では、どちらのタイプもいくぶん文章量が少なすぎるのかもしれませんね。

掌篇小説は字数の制約上、ライトノベルとちがって異世界ファンタジーなどの難しい設定よりも
説明不要の日常の情景(でもどこかがちょっとちがう)を描くほうが向いているんでしょうね。
そのうえでショートショートのように、いかにおもしろくオチをつけるのか
それとも余韻をもたせて終わらせるのか、そういうところで評価の分かれ目になるでしょう。
次回、8月期も楽しみにしていますので、ご応募よろしくお願いします!


<受賞作品全文掲載>

前向きにしか生きられない ラムネ著

私の隣の席には、博士がいる。みんな、そういうあだ名で彼を呼ぶのだ。
頭は良いけど、いつも無表情。何が起きても冷静沈着。でも変な奴。それが博士。
私は彼とは正反対な、感情的な女。
今日も、密かに一年以上片思いしていた遠野くんにカノジョが出来たという鬱情報を聞かされて、立ち直れないほど落ち込んでいた。
友達の聡美に愚痴りまくり、机に突っ伏して、もう死にたいよぉって後悔の念を垂れ流していると、置物みたいに黙って座っていた隣の博士に聞こえていたらしい。
「人生は後ろ向きにしか理解できないが、前向きにしか生きられない」
話を聞かれていたことに苛立った私が睨み付けても、博士は表情ひとつ変えずに呟く。
「いや、随分と後ろ向きだったから」
「こんなときに前向きになんかなれないわ」
「でも前向きに生きる方が、ずっと容易いと思うけどね」
「貴方なんかに何が分かるのよっ。容易いなんて、軽く言ってくれるじゃない・・・。だったらそれを証明してみてよ!」
すると博士は予想外の行動に出た。突然、立ち上がると、後ろ向きに椅子に座ったのだ。
そこからはずっとそのまんま。授業が始まっても、黒板を見もしない。先生に前を向けと怒られても、みんなが呆れて見ていても、「気にしないでくれたまえ」と涼しい顔。階段を下りる時まで後ろ向きでソロソロ歩いて・・・挙げ句の果てに一段踏み外して、転げ落ちる。さすがに私は博士にすがりついて、もうやめてよと訴えた。
「どうだろう。やはり前向きに生きたほうが、自然で容易いとは思わないだろうか」
なんか違うよ、と心底思ったけど、この人には何を言っても無駄な気がして、
「思えばいいんでしょッ!」って怒鳴ったら、
「それならいい。栄くんは、元気なほうが良いと思う」

そのとき初めて、ひょっとして私を慰めるためにやっていたんだろうかと考えて。
・・・・・・やっぱり、変な奴だと思った。



完全密室殺人事件 うれま著

「犯人はドラえもんだ!」
 刑事部長がまた何か叫んでいる。早く死ねばいいのに。
「被害者は六枚の鉄板を溶接して作られた正方形の部屋の中にいた。中には胸を刺された被害者ひとりのみで、凶器も見つからない。完全な他殺であるにもかかわらず、人間の出入りはおろか空気の漏れすらまったくない物理的に完全な密室だ。これで犯人がドラえもんでなかったら誰だというんだ!? あ、真犯人がわかったぞ!」
 展開はえーな。
「キテレツ君か!?」
 どっちもいねえし。ドヤ顔すんな。うぜえ。
 犯人も殺害方法もすでにわかってるっつーの。教えたらうるさいから黙ってるが。
「いやあ、さすがだね刑事部長君!」
 署長がニッコニコの笑顔でやってくる。また面倒なのが来たよ。
「今日も素晴らしい名推理だ! 我が署が県内トップの検挙率を誇るのは君のおかげだな」
「はっは。かのような密室、人間には不可能ですからな」
「当然だろう。実在の青少年には不可能だ。マスコミにもそう発表しよう」
 正気かよ。
「そう言うと思いまして、すでに手配してありますよ。記者会見は三時からです」
 ふざけんなハゲ。余計なことすんなボケ。あと一時間じゃねえか。
 イライラと待つ俺の元に一本の電話がかかってきた。部下からの報告を聞いた俺はほっと胸をなで下ろす。
 まにあったか……。
 ため息と共に受話器を置いた。
「部長、犯人が捕まったそうです」
「マジで!?」
「やっぱりドラえもんは実在したんだね!!」
 瞳を輝かせてハイタッチをかわす二人。俺は冷静に否定した。
「いえ、町の溶接工です。被害者を殺害したあと、外側から鉄板を溶接したそうです。指紋がべたべた残ってましたから」
「………………」
 二人の目にじわりと涙が浮かんだ。
「「死刑にしろ、必ずだ!」」
 涙目で声をハモらせる。
 お前らこそ早く死ねばいいのに。

ラノベと性について

ネット上では声優の平野綾によるテレビ番組での発言から処女じゃないうんぬんで
話題が盛りあがっていっていますが、これは声優やアイドルだけの問題ではなく
かつては漫画『かんなぎ』の主人公なぎが作中で処女じゃないというニュアンスの表現があったことで
今回ほどではないにしろ、ちょっとした騒動が持ちあがっていました。

ライトノベルをはじめとする若年者を主対象とするエンタメ作品全般においては
性の問題というのは非常にデリケートであるとともに貪欲だったりします。
このブログを書いている時点で、来週は夏コミケが開催されますが
これは漫画『げんしけん』でも触れられていましたが、同人誌即売会とはいえ下世話な表現をするならば
「オナニーのおかずを買い求めに50万人からの人間が徹夜してでも血眼になって何十万円も金を使う」という
世界最大規模の自作アダルトグッズ即売会という側面も持ち合わせているわけです。
コミケにおいて、そこは触れてはいけないタブーではありますが、オタクの性欲への執念の強さは
はかりしれないものがあるのは確かなんですね。
それでいて声優はおろか架空の存在であるキャラクターにまで純潔を求めるというのは
いささか奇妙な現象のように見えますが、中高生男子としては至極当たり前のことなんですね。

中高生男子の頭の中身を見ることができるなら、脳容量の8割9割は女の子のことばかり考えています。
それはもうエロエロです。それもそのはず生物学的に十代後半が生殖能力が最高になるのに
社会的には一人前として見られていないこともあり、多くの男子はその旺盛な生殖能力を発揮できず
鬱屈した日々をすごさなければならないわけですから、さもありなんです。

くわえて男子は女子に対して少なからぬ征服欲をもっています。
これは本能的な性向であって、ほとんどの男子は最終的に自分に従順な女子を選びたがるのです。
それも実在する女子に対するだけでなく、フィクションの女子であっても同様だったりします。
性的経験に乏しい若い男子としては、女子は自分よりも経験が浅くなければ、
軽んじられる、バカにされる、と強迫的に思ってしまいます。
こうなると未経験の男子ともなれば、それ以下となれば相手の女子も未経験しかありえません。
男はメンツを重んじるので、いろいろな理由をつけますが、結局は相手の女子にバカにされたくない一心で
未経験でもバカにされない同じ未経験の女子を求めているわけです。

そして通常ならば年齢を経るに従って、それなりに性的経験を重ねることで
こうした歪んだ性的偏執は徐々に解消されるものなのですが、
現代の日本において全男性の2割程度は生涯童貞のまま人生を終えることになるので
若い男子にしか見られない性的偏執を成熟した男性になっても持ち続けてしまうケースが多いのです。
このような人を卑下する人もいますが、本能的な欲求なのでしかたないことでもあります。

小説や漫画、映画といったフィクションの追体験を前提とした娯楽を求める人というのは
どうしても実生活において満たされていない人が多いのですから、
この問題についてはデリケートに扱わなければなりません。
必要がない限り、いたずらに刺激しないように配慮することが求められています。

過激さや斬新さ、新奇性のためだけに、こうした読者のナイーブな面を刺激しないようにしましょう。

究極のヒロイン像

きのうのポストに関連して、きょうは究極のヒロイン像について。

ヒロインについては、前々からツンデレやらヤンデレやらいろいろなジャンルに分類することもありますが
保守的な読者の多いライトノベルに限っては根源的にヒロイン像はたった1つのパターンししかありません。

そのままの主人公少年(≒読者)だけをすべて受け容れてくれて好きになってくれる美少女

これに尽きます。
「そのまま」というのは「無理しない自然体」と解釈すれば、とてもいい感じに聞こえますが
ぶっちゃけて言えば「まったく努力しない」ってことです。
モテるために何かするとか、好きになってもらう、好きでいてもらうためにがんばるとか
そういうめんどくさいことをしないでも、ずっと好きでいてくれる、そんな女の子が理想なんですね。

しかも、そんな努力のかけらもないグータラ主人公なのに
理想的なヒロインはというと、そんな少年のすべてを受け容れてくれる
寛大な包容力を持ち合わせているホトケ様のような浮世離れした性格なんですね。
いろいろと文句や皮肉を言ったりしても、なんだかんだ好きでいてくれるわけですよ。
実在少女なら文句さえ言わず、さっさと見限られてプッツリ音信不通ですよ。
文句を言われたり、怒られたりするだけでも幸せです。

そして、もっとも大事なのは、はっきりいってラノベの主人公の典型であり
大半の読者にも共通する「さえない」少年であっても、彼”だけ”を見つめ続けてくれることです。
普通に考えたら、ありえないですよね。
『ダメンズウォーカー』なんていうダメ男を好きになってしまう女子というのは一定数いるわけですが
この場合のダメ男というのは、ダメなりに格好いい面をもちあせているわけですよ。
たとえば顔だけはいいとか、喧嘩が強いとか、言うことだけは立派とかですね。

しかしながら「さえない」人に憧れるってことは絶対ありません!
「ダメ」に惹かれる女性は多くても、「さえない」に惹かれる女性は皆無です。
「さえない」っていうのは空気みたいな存在ですから女性にとっては存在しないも同じです。
もし、あなたが女性なら中高時代のクラスで一番目立たなかった男子の名前を憶えていますか?
ひょっとすると同窓会で会って、名前を訊いても、いたかどうかさえ思いだせないかもしれません。
非常ですが、それが現実の世界です。

けれども非実在少女のヒロインは、そんなさえない少年だけを選んでくれるんですよ。
イケメンに目を奪われることもなければ、爽やかスポーツマンに心をときめかせることもない。
特に勉強ができるわけでも、おもしろいことを言うわけでもない、そんな男を好きになってしまう。
美少女ゆえに告白されるけれども、もっと条件のいい男子に鞍替えするなんてありえない。
そんな美少女に憧れない「さえない」男子がいないはずがないのです。
しかも、どんなわがままをしようが、ほっとこうが、浮気をしたとしても
絶対に自分を見捨てることがないとわかりきっているなら、なおさらでしょう。


だからこそ読者は現実にはあり得ない美少女を求めてやまないのです。
みなさんの作品に登場するヒロインは、ちゃんと該当していますか?

サマーウォーズにみる葛藤とカタルシス

神アニメと評されることも多い『サマーウォーズ』がテレビ放映されたということで
今回はこの作品を教材として、物語の「葛藤」と「カタルシス」について説明していきましょう。

この作品の主要キャラを挙げるなら小磯健二、篠原夏希、池沢佳主馬の3人となります。

健二は典型的な主人公像である”さえない”少年です。
かっこいいわけでもなく、勉強ができるわけでもなく、そして饒舌なわけでもない。
どこのクラスにも数人はいる目立たない男子なわけですね。
ただ一点異なるのは、たったひとつだけあまり役に立たなそうな特殊な”能力”をもっています。
なぜなら実在するさえないクラスメートを主役にして物語を作れといわれても話が拡がらないからです。
もし話が転がるようなら、あなたのクラスメートはもっと溌剌とした学園生活を送っていることでしょう。
そして物語の展開はセオリーどおり、健二の能力がトリガー(発端)となってトラブルが生じて
絶体絶命のピンチになるものの再び彼の能力を使ってピンチを脱するという構成になっています。
ここまでは見事なまでに教科書的なものとなっています。
そんな健二の抱える内的障碍は数学オリンピック予選での失敗に見られる「本番での弱さ」です。
他には特に彼の抱える問題というのは見られませんので、解決されるべき課題はここにあります。
そしてクライマックスでは、彼は見事「本番の弱さ」を克服してみんなを救うことができるのですね。

つぎに夏希の内的障碍は何かというと「祖母の死」となります。
健二をバイトで連れ出すのも、そもそも祖母を元気づけるためだったりと
彼女の行動は終始、祖母によって動機づけられているからです。
ですから、いかに祖母の死を克服して昇華させるかというのが彼女の課題となります。
ところが夏希は、この課題について克服するシーンは描かれていません。
物語にとって描かれていないことは、ないのと同義です。
夏希は花札対決で窮地に陥ることで、みんなの助けを得て勝つわけですが
はっきりいってしまって、この解決方法は彼女の抱える問題とは無関係ですよね?
どちらかというと、この解決方法の提示は詫助向けのものだったでしょう。
もしも強引に夏希用の解決方法として改案するならば
祖母の仇討ちをすると独り暴走して花札勝負を挑む夏希だったが
独りでは勝てるはずもなく窮地に陥ったときに、みんなの助けを得る。
そこで祖母の言葉で「人は独りじゃ生きられない。世間様に生かされてるんだ」といった人生訓を実感して
祖母は死んでしまっても、祖母の心や思いはみんなの中に受け継がれて生き続けているんだとか
そういうエピソードでまとめるなりしないと、物語の構造として整合性がとれません。
たとえるなら数学が苦手で頑張るという話なのに結末は国語のテストで100点とってハッピーエンドみたいな
数学はどうしたんだよと突っこみたくなるような、ちぐはぐなストーリー展開になってしまっているんですね。
であるからこそ夏希はヒロインでありながら、いまひとつ印象が薄いキャラになってしまっているのも
心の葛藤に決着をつけて観客にカタルシスを感じさせるところまでいってないからでしょうね。

最後に池沢佳主馬については登場人物の立ち位置としては完全に脇役のはずです。
しかしながらネットでの人気ぶりを目にするかぎり、とても人気があるんですよね。
佳主馬の抱える問題は単純明快、「家族を守ること」です。わかりやすいし、ヒーローっぽいです。
だからこそ彼は最初の作戦が失敗したときに、誰よりも責任を感じていたし悔しかったので
失敗の原因を作った翔太に本気で殴りかかったり、わんわん泣いたりしたわけです。
ところが主人公であるはずの健二は何もアクションを起こしませんでした。
つまり演出上、健二は佳主馬よりも悔しさも責任も感じていなかったことになります。
この時点において『サマーウォーズ』の真の主役は佳主馬に交替してしまったといっていいでしょう。
主人公にはやらなければならないことがあり、それをやったのは健二ではなく佳主馬だったのです。
そして佳主馬は見事、復活を果たしてラブマシーンを倒すことで、間接的に家族を救います。
それこそがカタルシスなんですね。

この作品においてヒーローらしい葛藤を抱え、それを見事に解決したのは佳主馬だけです。
健二はというと結局のところ「本番での弱さ」の解消という、しごく個人的な達成しかできてないのに
佳主馬は家族を守るという大義名分をもち、挫折し、最後に立ち直って勝利するという王道をひた走ってます。
こうなったら主人公少年とヒロインをさしおいて、脇役なのに人気がでてしまうのも無理ないですよね。

『サマーウォーズ』の場合、テンポや映像美、そしてなにより最後の山下達郎の主題歌によって
ちょっとした瑕疵があっても、うまくカバーされて目立たなくはなっているなとは思いますが
物語構造だけを取りだしてみると、主役の少年少女は葛藤とカタルシスに欠陥を抱えていることで
見せ場を脇役にとられてしまう結果になっています。

ヒットしたんだから結果オーライという見解もあるでしょうが、もしもあなたが作品を作るときに
このような脇役に食われてしまうような主人公に設定してしまうということは
それ相応のリスクも生じることを、よくよく頭にいれておいてください。
HOMENEXT →
広告: