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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第1回日昌晶掌篇文学賞 7月期選考結果発表

文学賞を創設して最初の結果発表となります。
なんと7月期の応募総数は63作品と予想を上回る力作が集まりまして
選考は大変苦労しましたが、どうにか結果をだすことができました。
引き続き8月以降も、どうぞよろしくお願いします!
それでは前置きはこのくらいにして、さっそく結果発表(敬称略)と寸評にうつりましょうね。

【金賞(7月期月間賞)】(副賞:1000円ギフト券)
『前向きにしか生きられない』 ラムネ

とても素晴らしい作品です。やはり他の投稿作より頭ひとつ抜けていたと思います。
よくありがちな設定のようでいて、あまりないタイプの発想なのがおもしろいし、
800字以下なのに登場人物たちが活き活きと動いていて、しかもストーリー構成がしっかりしており
掌篇小説にとって大事な要素である余韻があるのが青春小説らしい清々しさまであります。
なにより評価したのは、この作品の続きを読んでみたいと思わせる力でした。
これは登場人物のふたり(栄と博士)の微妙な関係、距離感が巧く描けているからでしょうね。
設定やストーリーで見せようとする作品が多いなか、人物の魅力で勝負してきたラムネさんの作品は
力作ぞろいの応募作品の中でも一際輝いて見えました。次回作も期待しています。

【銀賞】
『完全密室殺人事件』 うれま

この作品でもっとも評価したのは”勢い”です。
他の投稿作にもコメディ調作品は多かったのでが、ここまで突きぬけた作品はありませんでした。
おそらくこれを短編以上の文章量にしたら、作者を殴ってやりたくなるような作品になるでしょうが
(実際、うれまさんの書いた別作品のネタ系短編について、30分くらいダメだしたことがありまして
周りのオフ参加者には、あんなに説教している日昌晶は見たことがないと言われてしまいました)
掌篇小説という規定においては、ハリセンの一撃のような痛快さになるんですね。
どちらかというとショートショート小説のジャンルに当てはまる作風でしょうか。

【佳作】
『格子の中』 はら
『ドクシャ目線』 時雨日暮
『響音』 葉桜
『悪党』 ledpink
『恋するゾンビのラプソディー』 ミカ
『980円の魔法』 ゆん
『黒い魔王』 ゼミ長
『どっち』 A
『初めてと幸せと』 けいぶん
『花火』 はじめ
(以上10作品、投稿順)

『格子の中』は叙述トリックとして正当派的な作品でよくまとまっていました。
『ドクシャ目線』はラノベ読者、作家志望者ならきっとおもしろく読めるでしょうし
実験的作品としても評価したいと思います。
『響音』と『恋するゾンビのラプソディー』は、発想などとてもおもしろいんですが
最後の最後でオチをどうにかしようとして読んでいて無理さ、強引さがでてしまいましたね。
逆に『980円の魔法』は終わり方はいいんですが、途中で980円というのがネタバレしてしまっているので
そこを巧く回避できていたら、もっと上にいけたと思います。
『黒い魔王』はネタとしてはよくあるものなんですが、ラノベ独特の語彙や言い回しを多用した文章が
楽しめる作品に仕上がってよかったと思います。
『どっち』は哲学的なテーマの意欲作でした。惜しむらくは主人公の葛藤をもっと描いてほしかったです。
『初めてと幸せと』と『花火』は、どこかで見たことのあるようなオーソドックスな構成であるんですが
それだけに読み終わったあとに余韻を残してくれる秀作だったと思います。


《総評》
今回ははじめての投稿ということになりますので、どんなものを書いたらいいかわからず
どうしても躊躇してしまった人も多いのではないでしょうか。
投稿作品の中でも特に多かったのが「なぞなぞ」系とでも言える作品群でしたね。
最後に謎解きが示されていて、読み終わった後に謎がとけるみたいな作品なんですが
なかなか効果的に生かし切れている作品が少なかったように思います。

反対に散文詩のような叙情的な作品についても、やはり説明不足になってしまって
読者が共感できるところまでいっていなかったのが印象的でした。
感動ものというのは感情を昂ぶらせる”前置き”のほうが大切で
ダムにたとえるなら前置きで充分に貯水しておいてクライマックスで一気に放流するわけですが
クライマックスだけだと、水もちょろちょろと出るだけになってしまうんですね。
やはり掌篇小説では、どちらのタイプもいくぶん文章量が少なすぎるのかもしれませんね。

掌篇小説は字数の制約上、ライトノベルとちがって異世界ファンタジーなどの難しい設定よりも
説明不要の日常の情景(でもどこかがちょっとちがう)を描くほうが向いているんでしょうね。
そのうえでショートショートのように、いかにおもしろくオチをつけるのか
それとも余韻をもたせて終わらせるのか、そういうところで評価の分かれ目になるでしょう。
次回、8月期も楽しみにしていますので、ご応募よろしくお願いします!


<受賞作品全文掲載>

前向きにしか生きられない ラムネ著

私の隣の席には、博士がいる。みんな、そういうあだ名で彼を呼ぶのだ。
頭は良いけど、いつも無表情。何が起きても冷静沈着。でも変な奴。それが博士。
私は彼とは正反対な、感情的な女。
今日も、密かに一年以上片思いしていた遠野くんにカノジョが出来たという鬱情報を聞かされて、立ち直れないほど落ち込んでいた。
友達の聡美に愚痴りまくり、机に突っ伏して、もう死にたいよぉって後悔の念を垂れ流していると、置物みたいに黙って座っていた隣の博士に聞こえていたらしい。
「人生は後ろ向きにしか理解できないが、前向きにしか生きられない」
話を聞かれていたことに苛立った私が睨み付けても、博士は表情ひとつ変えずに呟く。
「いや、随分と後ろ向きだったから」
「こんなときに前向きになんかなれないわ」
「でも前向きに生きる方が、ずっと容易いと思うけどね」
「貴方なんかに何が分かるのよっ。容易いなんて、軽く言ってくれるじゃない・・・。だったらそれを証明してみてよ!」
すると博士は予想外の行動に出た。突然、立ち上がると、後ろ向きに椅子に座ったのだ。
そこからはずっとそのまんま。授業が始まっても、黒板を見もしない。先生に前を向けと怒られても、みんなが呆れて見ていても、「気にしないでくれたまえ」と涼しい顔。階段を下りる時まで後ろ向きでソロソロ歩いて・・・挙げ句の果てに一段踏み外して、転げ落ちる。さすがに私は博士にすがりついて、もうやめてよと訴えた。
「どうだろう。やはり前向きに生きたほうが、自然で容易いとは思わないだろうか」
なんか違うよ、と心底思ったけど、この人には何を言っても無駄な気がして、
「思えばいいんでしょッ!」って怒鳴ったら、
「それならいい。栄くんは、元気なほうが良いと思う」

そのとき初めて、ひょっとして私を慰めるためにやっていたんだろうかと考えて。
・・・・・・やっぱり、変な奴だと思った。



完全密室殺人事件 うれま著

「犯人はドラえもんだ!」
 刑事部長がまた何か叫んでいる。早く死ねばいいのに。
「被害者は六枚の鉄板を溶接して作られた正方形の部屋の中にいた。中には胸を刺された被害者ひとりのみで、凶器も見つからない。完全な他殺であるにもかかわらず、人間の出入りはおろか空気の漏れすらまったくない物理的に完全な密室だ。これで犯人がドラえもんでなかったら誰だというんだ!? あ、真犯人がわかったぞ!」
 展開はえーな。
「キテレツ君か!?」
 どっちもいねえし。ドヤ顔すんな。うぜえ。
 犯人も殺害方法もすでにわかってるっつーの。教えたらうるさいから黙ってるが。
「いやあ、さすがだね刑事部長君!」
 署長がニッコニコの笑顔でやってくる。また面倒なのが来たよ。
「今日も素晴らしい名推理だ! 我が署が県内トップの検挙率を誇るのは君のおかげだな」
「はっは。かのような密室、人間には不可能ですからな」
「当然だろう。実在の青少年には不可能だ。マスコミにもそう発表しよう」
 正気かよ。
「そう言うと思いまして、すでに手配してありますよ。記者会見は三時からです」
 ふざけんなハゲ。余計なことすんなボケ。あと一時間じゃねえか。
 イライラと待つ俺の元に一本の電話がかかってきた。部下からの報告を聞いた俺はほっと胸をなで下ろす。
 まにあったか……。
 ため息と共に受話器を置いた。
「部長、犯人が捕まったそうです」
「マジで!?」
「やっぱりドラえもんは実在したんだね!!」
 瞳を輝かせてハイタッチをかわす二人。俺は冷静に否定した。
「いえ、町の溶接工です。被害者を殺害したあと、外側から鉄板を溶接したそうです。指紋がべたべた残ってましたから」
「………………」
 二人の目にじわりと涙が浮かんだ。
「「死刑にしろ、必ずだ!」」
 涙目で声をハモらせる。
 お前らこそ早く死ねばいいのに。
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