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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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サマーウォーズにみる葛藤とカタルシス

神アニメと評されることも多い『サマーウォーズ』がテレビ放映されたということで
今回はこの作品を教材として、物語の「葛藤」と「カタルシス」について説明していきましょう。

この作品の主要キャラを挙げるなら小磯健二、篠原夏希、池沢佳主馬の3人となります。

健二は典型的な主人公像である”さえない”少年です。
かっこいいわけでもなく、勉強ができるわけでもなく、そして饒舌なわけでもない。
どこのクラスにも数人はいる目立たない男子なわけですね。
ただ一点異なるのは、たったひとつだけあまり役に立たなそうな特殊な”能力”をもっています。
なぜなら実在するさえないクラスメートを主役にして物語を作れといわれても話が拡がらないからです。
もし話が転がるようなら、あなたのクラスメートはもっと溌剌とした学園生活を送っていることでしょう。
そして物語の展開はセオリーどおり、健二の能力がトリガー(発端)となってトラブルが生じて
絶体絶命のピンチになるものの再び彼の能力を使ってピンチを脱するという構成になっています。
ここまでは見事なまでに教科書的なものとなっています。
そんな健二の抱える内的障碍は数学オリンピック予選での失敗に見られる「本番での弱さ」です。
他には特に彼の抱える問題というのは見られませんので、解決されるべき課題はここにあります。
そしてクライマックスでは、彼は見事「本番の弱さ」を克服してみんなを救うことができるのですね。

つぎに夏希の内的障碍は何かというと「祖母の死」となります。
健二をバイトで連れ出すのも、そもそも祖母を元気づけるためだったりと
彼女の行動は終始、祖母によって動機づけられているからです。
ですから、いかに祖母の死を克服して昇華させるかというのが彼女の課題となります。
ところが夏希は、この課題について克服するシーンは描かれていません。
物語にとって描かれていないことは、ないのと同義です。
夏希は花札対決で窮地に陥ることで、みんなの助けを得て勝つわけですが
はっきりいってしまって、この解決方法は彼女の抱える問題とは無関係ですよね?
どちらかというと、この解決方法の提示は詫助向けのものだったでしょう。
もしも強引に夏希用の解決方法として改案するならば
祖母の仇討ちをすると独り暴走して花札勝負を挑む夏希だったが
独りでは勝てるはずもなく窮地に陥ったときに、みんなの助けを得る。
そこで祖母の言葉で「人は独りじゃ生きられない。世間様に生かされてるんだ」といった人生訓を実感して
祖母は死んでしまっても、祖母の心や思いはみんなの中に受け継がれて生き続けているんだとか
そういうエピソードでまとめるなりしないと、物語の構造として整合性がとれません。
たとえるなら数学が苦手で頑張るという話なのに結末は国語のテストで100点とってハッピーエンドみたいな
数学はどうしたんだよと突っこみたくなるような、ちぐはぐなストーリー展開になってしまっているんですね。
であるからこそ夏希はヒロインでありながら、いまひとつ印象が薄いキャラになってしまっているのも
心の葛藤に決着をつけて観客にカタルシスを感じさせるところまでいってないからでしょうね。

最後に池沢佳主馬については登場人物の立ち位置としては完全に脇役のはずです。
しかしながらネットでの人気ぶりを目にするかぎり、とても人気があるんですよね。
佳主馬の抱える問題は単純明快、「家族を守ること」です。わかりやすいし、ヒーローっぽいです。
だからこそ彼は最初の作戦が失敗したときに、誰よりも責任を感じていたし悔しかったので
失敗の原因を作った翔太に本気で殴りかかったり、わんわん泣いたりしたわけです。
ところが主人公であるはずの健二は何もアクションを起こしませんでした。
つまり演出上、健二は佳主馬よりも悔しさも責任も感じていなかったことになります。
この時点において『サマーウォーズ』の真の主役は佳主馬に交替してしまったといっていいでしょう。
主人公にはやらなければならないことがあり、それをやったのは健二ではなく佳主馬だったのです。
そして佳主馬は見事、復活を果たしてラブマシーンを倒すことで、間接的に家族を救います。
それこそがカタルシスなんですね。

この作品においてヒーローらしい葛藤を抱え、それを見事に解決したのは佳主馬だけです。
健二はというと結局のところ「本番での弱さ」の解消という、しごく個人的な達成しかできてないのに
佳主馬は家族を守るという大義名分をもち、挫折し、最後に立ち直って勝利するという王道をひた走ってます。
こうなったら主人公少年とヒロインをさしおいて、脇役なのに人気がでてしまうのも無理ないですよね。

『サマーウォーズ』の場合、テンポや映像美、そしてなにより最後の山下達郎の主題歌によって
ちょっとした瑕疵があっても、うまくカバーされて目立たなくはなっているなとは思いますが
物語構造だけを取りだしてみると、主役の少年少女は葛藤とカタルシスに欠陥を抱えていることで
見せ場を脇役にとられてしまう結果になっています。

ヒットしたんだから結果オーライという見解もあるでしょうが、もしもあなたが作品を作るときに
このような脇役に食われてしまうような主人公に設定してしまうということは
それ相応のリスクも生じることを、よくよく頭にいれておいてください。
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