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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第1回日昌晶掌篇文学賞 9月期選考結果発表

今回で3回目となる9月期の結果発表です。
9月期の応募総数は、先月よりやや少ない36作品でした。
数は少ないし選考も少しは楽になるかなと、ちょっとタカをくくっていたのですが
驚くほど格段に投稿作全体のレベルが上がっていたために選考はかなり難航しました。
前回、前々回は一読すれば、金賞や銀賞の出来は頭ひとつ飛び抜けていたのですが
正直、今回の金賞受賞作と佳作の差は本当に僅差でした。
今後もっと良作が数多く投稿されることが予想されるので
選考委員長の私も、もっと気を引き締めていかないといけないなと思いました。
それでは各賞の発表です。

【金賞(9月期月間賞)】(副賞:720円ギフト券)
『君(僕)の終わりを僕(君)は知らない』 おっとー

転校による男女の別れというテーマ自身は、それほどありきたりではないのですが
透明感がありつつも壊れやすいガラスのような青春らしさにあふれた情感が
とても小気味よく伝わってくる作品にしあがっていました。
作品に添えられたコメントを読むと、実際に作者が感じていた気持ちを作品として
そのまま書くのではなく、巧く作品として昇華できているなと思います。
※もちろん作品以外のコメントは評価に含まれていません。

<受賞者コメント>
ありがとうございます!金賞を戴いて、書くモチベーションがグッと上がりました。次も参加しますっ!

【銀賞】
『遠そうで遠くない、ちょっと遠い恋路』 日暮レ

金賞と同じく銀賞も青春期の恋愛ものとなりました。
こちらは情感よりも男女間の心の機微と齟齬によるすれちがいがテーマでした。
掌篇小説は日常の一コマを切りとって、それを作品にすることが多いのですが
たいがいの人が通ってきたであろう共通体験というのは共感できますよね。
結末が予定調和というのは掌篇なので気にならないところなのですが
ちょっとした表現や演出の差で、一歩およばず銀賞とさせてもらいました。

【佳作】
『戦士の伝説』 ゼミ長 
『幸せになりたくて……』 ミカ
『シュガーレスライフ』 玲レイ
『さくら』 ぺんぎん
『ルール』 飄凛然
『めしばな』 雷鳥
『あなたには会いたくない』 ジャイ
『後書き ~ご協力いただいた勇者に感謝します~』 さやにゃ
『僕の名前』 劉樹
『小さな魔女のいたずら』 あかさたな
(以上10作品、投稿順)

『戦士の伝説』は展開やオチ共にライトノベル風で軽妙で読みやすかったです。
実は中学生のときに私も経験ありますが、同じく先生に怒られた人も多いのでは?
『幸せになりたくて……』は怪談話の典型で「累ヶ淵」の類型ではあるのですが
いろいろと趣向も凝らされていたのと、ホラーで良作が少ないので選出しました。
『シュガーレスライフ』は恋人同士のちょっとした痴話げんかを描いていて
そのほほえましさがよかったです。あと結末にもう一工夫あればよかったですね。
『さくら』はシンプルそうで意外とテーマや内容が濃密なのに800字以内でよく書けていました。
結末など、もう少しキーワードとなる「旅」に絡めるとよりよくなるでしょう。
『ルール』は前半の鬱々とした重たい文章に対して、後半のオチにあたる軽い文章とが
よく対比されていて面白く書けていました。ただ前半の会話文がラノベっぽいのが残念。
『めしばな』は着想も面白いし、よく書けていましたが、あともう少しなんですが
主人公の心理を巧く描ききっていれば、より上位を狙えたでしょう。
『あなたには会いたくない』は良くも悪くもお手本になるような良作なんですが、
欲をいえば、もっと作者の個性をだしてアクのある作品でもよかったですね。
『後書き ~ご協力いただいた勇者に感謝します~』はアイデアを評価したのですが
どうしても掌篇では収まりきれないスケールなので読者が置いて行かれがちになっています。
ショートショートではないので、あまり技巧的に走らないほうがいいと思います。
『僕の名前』は聖書の創世記に題材をとった作品になっているわけですが
童話風の素朴な文章表現とあいまって、効果的に演出できていました。
『小さな魔女のいたずら』は、時期的にもタイムリーですし、作品としても良作です。
さらに上をめざすなら登場人物の個性がよくわかるように書けるといいですね。

《総評》
結果を発表するのも3回目となりましたが、受賞者の名前を見ていくと
いわば常連となるような人たちも出てきたようです。
やはり文章の基礎ができていると人、物語のなんたるかがわかっている人と
そうでない人では実力差が如実にあらわれてくるんですよね。
ですから基礎を身につけた人は、コンスタントに一定以上の評価できる作品を
書き続けることができるということなのでしょう。
とはいえ基礎力さえつければ、長編より容易に上を狙えるのが掌篇の魅力です。
慢心されても困りますが、何度も選出される人はそれなりに実力があると思っていいですよ。
またいくら書いてもなかなか選ばれない人は、作品云々よりも、
まず基礎を身につける努力をしたほうが、掌篇だけでなく投稿用長編のためにもいいでしょう。
今回選ばれた人も選ばれなかった人もまたよろしくお願いします。



<受賞作品全文掲載>

君(僕)の終わりを僕(君)は知らない  おっとー著

 よく晴れた日の昼下がり、僕とちはるは学校を抜け出した。ちはるの手を引っ張りながら、何故抜けだしたのか、何処に向かっているのか、今さらそんなことを考えた。
「結構、大胆なんだね」
 初めて来た小さな公園のブランコに座ると、ちはるは普段と全く調子を変えずに言った。
「憧れてたんだ。好きな人と抜けだすの」
 精一杯格好を付けたし、今の僕にとって一世一代の告白だったのに、ちはるはさりげない表情でブランコを漕ぎ始める。僕のお気に入りの、ちはるの後ろで二つに結んだ髪が宙で波打つ。
「ちはるって興味がないと無視するタイプの人間?」
「どうしようもないことは無視するタイプの人間」
「ははは」
 頑張って笑みを湛えてはみたけれど、胸は粘り気のある泥水でも流し込まれたように重苦しいし、泣きたいし、叫びたい気持ちでいっぱいになる。
 ちはるはブランコから「ほいっ」と跳躍して降りると、徐にフェンスのある方へと歩く。俺もその後ろ姿を追うようにフェンスの方へ歩む。
「住宅街もこうやって見ると、割と良い景色だよね」
「あ、うん。そうだな」
 公園は高台に位置していて、住宅街を俯瞰から見渡すことが出来た。
「こんなに広い世界で、また会うことってあるのかな~」
「あるだろ。電話も手紙も、パソコンだってあるし」
「そんなんじゃなくて、〝このままで〟って意味」
「ふ~ん?」
 良く意味が分からずにちはるを見たが、ちはるは街から視線を外さなかった。
 ちはるは繋いでいた僕の手を一瞬、ギュッと強く握ったあと、優しく手を解いた。
「ばいばい」

 翌日、ちはるはこの街を去った。親の都合で転校。
 お別れ会の後に二人で学校を抜けだしたことは長々とからかわれ続けた。けれど、ちはるが転校して一年、俺に彼女が出来た。ちはるも向こうで彼氏が出来たらしい。
 その時に俺はやっと〝このままで〟の意味が分かった気がした。
 二十年三十年経っても、会うことはないんだろうな。ということも。



遠そうで遠くない、ちょっと遠い恋路 日暮レ著

「気持ちってのは言葉にしなきゃ伝わらないよ。感謝でも謝罪でも、相手が察してくれるのを待ってちゃキリがないもの」
 それが彼女の口癖だ、そして俺も概ね同意見である。

 ――だがしかし、それが出来たら苦労などしないというのも確固たる事実だ。
 彼女に一言「好きだ」と伝えられたなら、「俺の女になれ」なぁんてワイルドにキメられたのなら……。
 現実は皮肉であり、悲惨でしかない。
 俺が少しでも好印象を残そうと四苦八苦したところで、彼女は何の反応も見せないのだ。
 彼女がとことん鈍いのか、それとも俺のアプローチが地味なのか。……男として見られていないという可能性はこの際捨て置くとする。
 先はあまりに長い、果たしてこの不毛な恋が実る日は来るのだろうか……?



「……はぁ」
 その日、珍しく彼女が溜息を吐いた。
 いつも鉄仮面で機械の如く働く彼女にしては、あまり見られない光景である。
「どうかしたんですか?」
「あー、ちょっとね」
「悩みごととか?」
「いや、悩みってほどじゃないんだけど、……世の中そう思うようには行かないなぁってさ」
 少し意外だった。
 彼女はもっとこう、『パーフェクト』な部類の人間だと思っていたのだ。
「伝えたいことがあっても伝えられないとか。一言で良い筈なのに、その一言がどうしても出て来ないとか」
「ああ、解ります。そういうコトってありますよね」
「何でだろ?」
「……きっと臆病になるんでしょうね。傷付いたり、傷付けたりするのが怖くて踏み込めなくなるんですよ」
「じゃあ臆病者は相手が何とか気付いてくれるまで、遠くから祈り続けるしかないのかな?」
「そうですね、でも……」

 ――あくまで希望に過ぎない。

「じっと眼を逸らさなければ、いつか相手だって気付いてくれますよ、きっと」

 ――けれど、期待するのは自由だ。

「……うん、そうだと良いね」
 俺と彼女は少しの間お互いの顔を見つめ合い、やがてどちらからともなく笑い合うと、二人して深い溜息を吐いた。

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