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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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意味のある文章のすすめ(講義オフ補講)

 3月22日(日曜日)に第1回初心者オフを開催しました!

 その名の通りライトノベルを書きたいんだけど、文章なんて学校の宿題で書いた読書感想文以来だという人から、まだ投稿歴の浅い人までを対象とした講義中心のオフです。

 内容は初歩の文法からはじまって、小説執筆には欠かせない文法や文章表現方法、およびライトノベル特有のテクニックなどを3時間の講義の後、ワークショップとして実際に短い文章を書いてもらい、それを相互評価してもらいました。

 講義内容は小説を書こうにも右も左もわからない人にも道しるべとなる基準を示しました。特に『小説の書き方』といったハウツー本には書かれていない細かいことも集中的にまとめています。また今回のワークショップでは情景描写の練習として「高校2年生の主人公が登校するシーン(4月)」という課題としました。

 結果として高評価の人は、もうダントツでしたね。やっぱりいい文章は誰が読んでも好感を持たれるということでしょうか。ただ講義の中ではさほど情景描写の書き方について説明していなかったので、この場を借りて少し補足講義をさせてもらいます。

 まずは下の情景描写を読んでみてください。

 スターンウッド邸の玄関は二階建ての高さだった。インド象の一隊をごっそりいれられるくらいの入口の扉の向こうには、ステンド・グラスがあった。何も着ていないがうまいぐあいに長い髪の毛を持った貴婦人が、木にしばりつけられ、それを黒っぽい鎧を着た騎士が助けようとしている絵だ。騎士は礼儀正しく兜の面頬をどけ、貴婦人をしばっている縄の結び目をいじっているが、どうも処置なしらしい。私はその場に立って、もし私がこの邸に住んでいたら、おそかれ早かれ登って行って騎士殿に助け船をだしてやるだろう、と思った。まるっきり、縄をほどこうとしているようには見えないのだ。

 これはハードボイルド小説の金字塔、レイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』冒頭シーンの一部です。作中の「私」とはもちろん世界で最も有名な私立探偵、フィリップ・マーロウ。つまり、この文章はマーロウの視点で描かれた情景描写です。では、細かく見ていきましょう。

 このシーンでマーロウがしていることはお屋敷のエントランスにあるステンドグラスを見上げただけですよね。他には何もしていません。しかしチャンドラーはマーロウにただステンドグラスを見せるという些細な行為をさせるだけで、その後に続くフィリップ・マーロウのキャラクター性を全て物語ることに成功しているといっても過言ではありません。

 まず「インド象の一隊をごっそりいれられるくらいの入口」という比喩表現(直喩)は、明らかに金持ちに対する皮肉がこめられています。つまり人間(=自分)には不必要なものであるという前提で、ゾウのように肥大化した金満家の虚栄心に対する反発が読みとれますよね。マーロウは皮肉屋なのです。

 つぎにステンドグラスに描かれた囚われのお姫様と騎士についての感想が、もっとも大切です。マーロウは出来ることなら「騎士殿に助け船をだしてやるだろう」と思っています。もしマーロウではなければ、情けない騎士などほうっておいて、抜け駆けにお姫様を助けたいと思うのが普通の男の感覚でしょう。でもマーロウはそんなことは思わない。お姫様の美貌にも惑わされることなく、おせっかいにもステンドグラスの中にまで入って行って困った人に手を差し伸べずにはいられない性分だということが、これを読んだ読者にイメージとして示されているわけです。

 もし上記のようなことを作者が読者に伝えたいがためにマーロウが「これだから金持ちは嫌いなんだ」とか「俺は困ったやつは放っておけないぜ」とか口にだして言ってしまったらどうでしょうか? そんなマーロウじゃ、逆に心の狭い小物、しかも口だけの信用できない偽善者と読者に思われるのがオチです。でも、そうならないようチャンドラーは短い情景描写のシーンにマーロウの”人となり”を巧みに織りこむことで不屈の私立探偵フィリップ・マーロウなる主人公を読者に知らしめることに成功したのです。

 つまり登場人物が「ふと空を見上げる」のも「昼寝しているネコを見かける」のも、すべて何らかの理由があるのです。たしかに現実世界では結果的に人生において無意味な事象ばかりでしょう。でも小説の中では主人公が見るもの、聞くもの、感じるもの、その他あらゆるものが主人公にとって必要なものだから、わざわざ紙面を割いてまで描写されているのです。無意味なものは全てカットされているからです。だから無意味なものをダラダラ書くべきではないんですね。だから、もしそんな主人公の性格なんて織りこむ必要がないというのなら、上の例なら「スターンウッド邸は豪奢だった」と一言でいいのです。

 それに豪華な邸宅の中にある数々の物の中からわざわざステンドグラスに注目したのはマーロウゆえの視点です。他の人間なら絵の騎士の手が不器用そうだなんて微塵も考えませんよ。もし主婦だったらステンドグラスよりも「こんな大きな部屋を掃除するとしたら、いったい何日かかるのかしら?」とか思うでしょうねw でもマーロウは掃除より絵の騎士が気になってしかたがなかったのです。だからこそマーロウの性格が特徴的に浮き彫りになり、一般読者はマーロウという人物が気になってくる。読者はステンドグラスのデザインや値段、製作年代なんて気にする人はいないし、どうでもいいんですね。

 さて、みなさんは状況説明だけの目的とか”章”の冒頭部では情景描写を入れるのがセオリーだからとかいって特に書かなくてもいい無意味な情景描写シーンを書いてしまってませんか? だとしたら大きなミスをおかしています。ぜひ何気ない文章でも軽んじることなく意味のある文章を書いてください。

 今回はそんなことを学んでもらうためのオフ会、ワークショップでした! またいつか希望者がいれば初心者オフをやってみたいですね。そのときは、ぜひよろしくお願いします!
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