L'Anovelién

UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

SEARCH

CONTENTS
LATEST
LINK
BOOKS

RSS
COUNTER

ライトノベル創作教室ラノベりあん 中二病でも書けるライトノベル教室♪

小説の楽しい書き方講座ブログ 毎週開催の創作塾と連動中!

第1回日昌晶掌篇文学賞 10月期選考結果発表

お待たせしました。10月期の発表です。今回の応募総数は34作品でした。
今回も力作ぞろいで選考は難航しましたが、ここに発表させてもらいます。

【金賞(10月期月間賞)】(副賞:680円ギフト券)
『キッチン』 かえで公

まず、この作品はとてもおもしろいです。
残念ながら吉本ばななの『キッチン』を読んでいない人には
このおもしろさが半減以下になってしまうのは非常に残念ですね。
いくら言ってもラノベしか読まない人も多いので
少し昔の大ベストセラーでも読んでない人はわりと多いんですかね?
こういう他作品をオマージュする作品は私が気づいた限りでは、この賞では初めてです。
冒頭を読みはじめたときは「おや、どこかで読んだような?」という既視感というか既読感をいだき
その後に続く違和感となぞときの展開の妙は非常に良質のパロディでした。
『キッチン』を読んでいない人にはちょっとわからないでしょうが、まさに金賞にふさわしい作品です。

<受賞者コメント>
コメントがもらえしだい、後ほど掲載します。


【銀賞】
『紙飛行機』 舞華

なにげない学校シーンの1コマをきりとった物語です。
なので、これといった事件が起こるわけでも魅力的な主人公が出てくるわけではありません。
しかしながら、この作品は掌篇小説にとって、とってもたいせつな読後の余韻があるんですね。
その余韻は「紙飛行機」というモチーフによって、きれいに描写されています。
とても清涼感のある青春の物語です。


【佳作】
『もうだめ……! part.2』 ゼミ長
『カボチャばばぁの報せ』 雷鳥
『誰か拾って下さい』 玲レイ
『物思いの秋』 乾芳秋
『どこに行くんだろうか?』 遥かな時を生きる2
『そうだ。普通に生きよう』 おっとー
『ガサ入れ』 星兎心
『舌と缶』 コフィ
『ワカリアエナイイタミ』 けいぶん
『歴史の誤解』 さやにゃ
(以上10作品、投稿順)

『もうだめ……! part.2』は言葉遊びシリーズ?の第2弾ですが、
まだやるかという心意気を今回は評価してみました。前回よりもおもしろくなっていますし。
『カボチャばばぁの報せ』のようなオチのない作品というのも掌篇で味がでてきます。
この最後まで読んでも「おや?」と思わせる微妙な設定がいい味をだしておもしろい読後感になっています。
『誰か拾って下さい』は王道路線のライトノベルな展開が繰り広げられますが
最後に主人公が「ファンタジー」を否定してリアルに戻るところがおもしろいです。
『物思いの秋』はうってかわって思索的な作品です。なんでもないようでいて奥が深いのが気に入りました。
作品の中に描かれた情景の美しさも高評価です。
『どこに行くんだろうか?』は最後まで銀賞かどうか悩んだ作品です。
作品のテンポ、展開、余韻ともによく出来ておもしろかったですが、ややありきたりではありました。
『そうだ。普通に生きよう』は偶然の物語がおもしろく読めました。
難点としては展開がご都合主義すぎるので、しっかりとした理由があればもっと上にいけたでしょう。
『ガサ入れ』は刑事ギャグもので、なぜかこの賞では定番路線ですよね。
定番なだけにおもしろくできていたと思います。もちろん下品なところも含めて。
『舌と缶』はなにげないシーンとどうでもいい日常を執拗に描くことでおもしろさがでています。
こういった作品はいかにも掌篇小説らしくていいですね!
『ワカリアエナイイタミ』はアイデア勝ちな作品です。
この手の実験的な作品としては完成度が高いところを特に評価しました。
『歴史の誤解』はショートショート風SFの意欲作で完成度も高かったです。
おもしろいのですが星新一作品のようなシニカルさを加えると、もっとおもしろくなりますよ。


《総評》
中だるみというのか、投稿作品数は微減しているというか、落ち着いてきたのですが
投稿作全体のでレベルは確実に高まってきています。
数ヶ月前なら確実に佳作になった作品でも、今では入選が難しい状況です。
小説は小説でも掌篇小説独特の書き方や世界観が浸透してきたとよろこんでいます。
余談ですが、これまで夏から秋にかけて募集してきているのですが
なぜか毎回「バレンタイン」ネタが投稿されてきています。
それだけ話が作りやすいのかもしれませんが、ありがちな設定なだけに
選者が「おおっ!」と感動して入賞に至るケースも少ないです。
季節イベントをやるなら、季節感に合わせてもらったほうがいいかなと。
毎月の選考ですから、季節ものの作品はちょっとだけですが評価高くなりますよ。
だいたい発表は1月遅れなので、投稿時には1ヶ月早取りしたものが望ましいですね。
今ならさしずめ「クリスマス」ネタでしょうか。
それでは、来月もよろしくお願いします!


<受賞作品全文掲載>

キッチン かえで公著

 私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。
どこのでも、どんなのでも、それが台所であれば私はつらくない。
できれば機能的で機材も多く、よく使い込んであるといいと思う。
ものすごくきたない台所だって、たまらなく好きだ。寧ろきたない方が好きだ。
床に野菜くずがちらかっていて、スリッパの裏がまっ黒になるくらい汚いそこは、異様に広いといい。そして物がたくさんあるといい。
食料がならぶ巨大な冷蔵庫がそびえ立ち、その銀の箱が私の生きる場所だ。
油が飛び散ったガス台や、さびのついた包丁からふと目をあげると、窓の外には淋しく真夜中の星が光る。
こんな時、私はよくうっとりと思う。
いつか死ぬ時がきたら、台所で息絶えたい。
ひとり寒いところでも、だれかがいてネバネバしてるところでも、私はおびえずにちゃんと見つめたい。台所なら、いいなと思う。
吉本家で生まれてから毎日台所で眠っていた。
どこにいても何だか寝苦しいので、暗い所へと流れていったら、冷蔵庫の下が一番よく眠れることに気付いた。
両親はそろって若死している。だからと言って誰も私の事など育ててくれない。そんな事良くある事だ。私は落ちているもの捨てられているものを食べて生きてきた。
親戚達も目まぐるしくどんどん死んでいく、私がどんどん産んでも子供もすぐに死んでいく。
次死ぬのは自分かもしれないと恐怖すると、いつも冷蔵庫からするぶーんという音が、私を孤独な思考から守った。
そこでは、けっこう安らかに長い夜が来て、朝が行ってくれた。
ただ星の下で目覚めたかった。
朝の光りで眠りたかった。
それ以外のことは、すべて淡々とすぎていった。
しかし! そうしてばかりもいられなかった。現実はすごい。突然台所の電気が点いたかと思うと
「きゃーっ! ゴキブリッ!」
という家主、吉本ばななの悲鳴が聞こえ、即座に私は丸められた新聞紙でぺしゃんこにされた。


紙飛行機 舞華著

授業があまりにも暇だったので、教科書を1ページ破って紙飛行機を作った。
「なぜこんなにも退屈な授業を受けなくてはならないのだろうか。」
ふと、学生にはあるまじきばかばかしい疑問が頭をよぎった。
窓の外では木々が穏やかに揺れている。
夏の暑さも過ぎ去り、けれど日中はまだ寒いとは言い難い
どちらかと言えば心地よい秋のある日。
あぁ、サボればよかった。
サボって、屋上のいつもの場所で昼寝をしていれば……。
今更ながらに悔やまれる。

紙飛行機を飛ばす。

風邪に乗って窓の外まで飛んでいく。
どうやら巧く作れたみたいだ。
「私の代わりにどこかへ行ってくれ。」
なぜか窓の外へ飛んでいく紙飛行機を見て思った。
考えにふけっているとふと私の頭に衝撃が訪れた。
「っいた!」
思わず叫んでしまった私の目に、
先ほどまで教壇で板書をしていたはずの先生が映った。
手には教科書を持っていた。
「またお前は。」
「ははは……。すみません。」
ため息をつきながら先生は教壇へと戻っていく。
クラスメイトはクスクス笑っている。
いつも先生は怒りはしないが、
授業を聞いていないのを見つけると教科書を生徒の頭に降らす。
角でもないからそこまで痛くはないのだけれど、
さっきみたいに油断していると突然の衝撃に驚くのだ。

頭をさすりながら再び窓の外に目をやると
校庭の端の木の辺りを飛んでいる紙飛行機が見えた。
関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://lanovelien.blog121.fc2.com/tb.php/270-ecc3ee27

HOME
広告: