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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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『私本太平記』を読んでキャラクター造形を考える

吉川英治晩年の作『私本太平記』を読んでいます。
『新平家物語』は大学生時代に読んだのですが、どうも南北朝時代はなじみがなく
とっつきにくくて敬遠していたのですが、これがまた当然ながらおもしろいですね。

まだ文庫版全8巻のうち2巻までしか読んでいなくて、ついに楠木正成挙兵かみたいなところなんですね。
すごく続きが気になるところなのですが、他にも図書館からいろいろ借りてまして
貸出延長ができない本を先に読まなければいけなかったりともどかしかったりします。

ちなみに現在、読みかけの本は清水義範『バールのようなもの』です。
ニュースでよくアナウンサーがいう”バールのようなもの”とは一体どんなものなのかと
追求してゆくといったサスペンス小説(短編集)ですが、これがまたおもしろいですよ。
あとはインパクトで借りてしまったマリーナ・レヴィッカ『おっぱいとトラクター』とか
話題の貴志祐介『悪の教典』(上下巻で分厚い……)なんかを積読してます。

大衆に支持される巧みな人物造形


話は逸れましたが、今日の本題は『私本太平記』なんですよ。
吉川作品だと『バガボンド』の原作にもなっている『宮本武蔵』がいちばん有名ですが、
これがまた人物造形が巧みなんですよね。本当に感心してしまいます。
なにが巧いといって読者の心をつかむ魅力ある人物像なんですよね。
特に太平記のような軍記物は自然と群像劇として描かれるのですが、そこに登場する武将が格好いい。
貧困から大成した作家であり、大衆に支持された作家だけに、その清濁併せ持つ人物造形が秀逸です。

特に私がこれは凄いと感じたのが、楠木正成の描き方なんですよね。
戦前の皇国史観では後醍醐天皇に従い、わずかの兵で大軍を撃破しまくる天才軍師として描かれ
さらに忠臣といえば楠公、楠公といえば忠臣というくらい称揚されまくった偉人です。
今も皇居にはヨーロッパを真似て作った楠木正成の騎馬像が勇ましげに建ってますよね。

どちらかというと今でいう上杉謙信的な神がかり的な浮き世の者ではないような存在として
描かれていた楠木正成を吉川英治は戦嫌いの気のよいおじさんとして描いているのです。
イメージとしてよくわかると思うのは、これを原作として作られたNHK大河ドラマでは
主役の足利尊氏が真田広之なのに対して、楠木正成は武田鉄矢なんですよ。そう金八先生です。


意外性を納得させる手腕


同じく近年のNHK大河ドラマでは上杉謙信をGACKTが演じていたわけですが
戦前にはそれ以上にクールな英雄とされていた楠木正成が金八先生ですよ。
はっきり言って、どう考えてもミスマッチなわけです。
連載開始が毎日新聞にて1958年(昭和33年)1月からということですから
まだ戦後13年という戦前教育の染みついている読者相手に、この換骨奪胎ぶりは冒険ですよ。
この楠木正成という歴史上の英雄を180度転換させた人物像をどう読者に納得させるか?
これを毎日原稿用紙2枚3枚といった細切れ原稿の新聞連載の中で魅せなければいけなかったのです。
並大抵の筆力でできるものではなかったでしょう。

登場シーン演出の妙技


では具体的に楠木正成がどのように登場するかを簡単に説明していきましょう。
まず最初、主人公の足利尊氏が青年期から登場するのに対して
楠木正成は常に謎に包まれた存在として、朝廷が最も頼りとする男として名前のみが登場してきます。
この『私本太平記』の読者で楠木正成を知らない者はいないでしょうから、いつ出るか、いつ出るかと
待ち遠しいくらいに期待をどんどん膨らましてゆくんですね。
しかも新聞連載ですからリアルタイムの読者にとっては、さらに効果倍増だったでしょうね。

そして、そのときの視点となっている主要人物がピンチになったときに、颯爽と現れて助けてくるのが
楠木正成の弟であることがわかり、ここでついに楠木正成が登場すると大いにわくわくするわけです。
さらに少しじらし、ついに登場したのは、戦を嫌い、兵法を好まない人情の人、楠木正成なんですね。
これはもう読者にとっては肩すかしもいいところです。
希代の英雄としてGACKTが颯爽と現れるかと思ったら、気さくな武田鉄矢が出てくるわけですから。
ここで並みの文章力だと、従来とは正反対の楠木正成に反発するわけですよ。
読者なんて勝手ですから「こんなの楠木正成じゃない!」と投書した人もいたでしょう。
しかし従来の人物像とはちがうけれど、楠木正成でなくても描かれている人物自体が魅力的なんです。
常に民を思い、家族睦まじく、小さな領地を懸命に安堵してゆこうとする姿勢。
平時であるなら、それはしごく退屈な人物に見えるかも知れないけれども
風雲急を告げ、周囲が不穏になり、争乱の兆しがあらわれだした時代だけに、それに抗う姿が格好いい。
かえって倒幕の野心を秘めている足利尊氏のほうこそ時代に流されてしまっているように見えます。
目まぐるしく変化する背景の中では、静止しているモノのほうが目立つように、
簡単に動こうとしないからこそ楠木正成の人物像は浮き立ってゆくわけです。

そうして楠木正成登場のエピソードのクライマックスにて、吉川英治の楠木正成像は結実します。
嵐の夜、機を得たりと迅速に動く楠木正成の行動力、その先に見すえた深謀遠慮の片鱗が光るんですね。
これは実際に読んでみないとわからないかもしれませんが、見事なまでにエピソードで人物像を
見事に描ききっていますので、一読の価値はあるでしょう。
さらにこの先、戦の虚しさを感じながらも獅子奮迅の戦いぶりを見せるシーンが待っているのです。


主人公の魅力を伝えるファースト・エピソード


『私本太平記』では冒頭シーンではありませんが、主人公が登場するシーンにおいて
どのように描けば、もっとも読者が主人公の人となりをわかってくれて、しかも共感してくれるのか
そういうことを直感で書けるなら、それにこしたことはありませんが、
それができないなら緻密に計算して演出してあげるよう心がけてください。
あなたの考えた主人公をもっとも活き活きとさせられるのは、どんなエピソードですか?




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コメント

NHK大河ドラマ太平記

from 万佳
以前から、真田広之さんのファンでしたが、中国語をマスターし映画によく出られてました。しかし、ピン!と来ませんでした。
そして《ラストサムライ》
これには大感動!!!
現在再度《太平記》をレンタルして観てます。
真田広之さんは言うまでもなく、武田鉄矢さん=とってもいいですよ!!
鶴太郎さんの心を病んだ北条高時役も、感情表現が素晴らしいです。
心にググッとと来ます。
今の大河ドラマは、アニメぽいですが、過去の大河ドラマは、重々しくて、人間表現がよく出来てると思います。

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