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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第1回日昌晶掌篇文学賞 1月期選考結果発表

選考が難航しまして、こんなに発表が遅れてしまいましたが2011年になってはじめてとなる
1月期の結果発表となります。今回のエントリーは40作品でした。

【金賞(1月期月間賞)】(副賞:800円ギフト券)
『太刀魚の塩焼き』 雷鳥

この作品はライトノベル作家志望コミュで募集しているとは思えないような
郷愁を誘う情感ある作品として、他の作品に対しても異彩を放っていました。
作品自体、すごくよくまとまっていて質の高い掌篇小説になっています。
お酒のメーカーなんかの新聞広告枠でたまに掲載されそうな趣がありますよね。
完成度が高いので特に言うこともないのですが、作中の私と「親父」の思い出を添えると
より共感性が高まって、昔日の郷愁だけでなく太刀魚をモチーフとした親子の情も描ききれたと思います。


【銀賞】
『汚点』 ラン太郎

読後感が悪い。というか読んでいる途中から気持ち悪い……
これは作者の思惑どおりの効果がすごくよく出ていると思って今回は銀賞とさせてもらいました。
しかし、やはり効果的には一発ネタなので、他の人は二匹目のドジョウを狙って
同じようなタイプの作品はやめてください。そんなのばかり読みたくないですから。
この作品についていえば、淡々とした描写が読者の脳内で具現化して恐怖を醸造するんですね。
無垢の恐怖というのは乙一作品にも多く見うけられるタイプなのですが、
この作品では800字以内という制約のなかロケットスタートで見事に描ききっています。
こういう書き方は作者に技量がないと書けないんですよね。


【佳作】
『あるカフェの幽霊』 ゆすら
『昔話』 葱トロ巻き
『悪魔でございます』 ショウ
『丑三つ時の科学な呪い』 黒アリ
『未完成』 樋浦ユースケ
(以上5作品、投稿順)

今回の佳作は回数を経て自然と審査基準もあがってきたので、5本となりました。
『あるカフェの幽霊』は大ヒット映画『シックスセンス』と同じオチなので
肝心のオチがちょっと予想しやすかったのが残念でしたね。
もう一ひねりしてもらえると、もっとよくなったと思います。
『昔話』もやはりオチに難があって、いまひとつオチに説得力が欠けていました。
どうして先の人類があのような異形の姿になったのかの理由説明だけでなく、
あの姿のものたちが今に見せる人類らしさの名残りを描くのが昔話のセオリーです。
そこを書き加えて欲しかったですね。
『悪魔でございます』もです。これは序盤が非常に引きこまれる展開と文章なのに
オチがありきたりすぎて肩すかしをくってしまうんですね。
オチで勝負するタイプの作品はやはり最後の落としどころで評価が一転するものです。
『丑三つ時の科学な呪い』はオチはいいんですよ。
しかし読後の余韻を意識してしまったために痛快さが半減してしまいました。
この手の作品は落語のようにバッサリぶった切って終わらせたほうが効果的であり
つまるところの読後感もよくなります。あとオチが唐突になるので伏線もほしかったですね。
『未完成』は情感に訴える作品でストーリーそのものはいいと思うのですが
難をいえばもう少し文章を工夫してほしかったですね。
もっと叙情的にするか、あるいは素朴なものにするか、いろいろ方向性はあると思うのですが
今回の文章はどうも中途半端で印象が薄く、それだけに読者が引きこまれないんですね。
そこを注意して書くと格段によくなると思います。


《総評》
なんと2月発表だというのに、バレンタインネタがありませんでした。
春から秋まで何作もあったのに、なぜかシーズン本番になった途端になくなってしまうのは
なんだか奇妙な感じがしましたが、やはり月1で発表していますので、
1ヶ月前倒ししての季節感を意識した作品というのはほしいところですし、
前々から評価も少しおまけするとは言ってるんですけどね……うまいこといきません。
で、今回は佳作が5作品とかなり減っています。審査基準が厳しくなっているのもありますが
全体的にあとちょっとの工夫やひらめきがほしい作品が多いんですよね。
ここまで続けてきたので、さすがに掌篇小説としてこれはいかがなものかと思ってしまうような作品は
もうありませんので、投稿作品全体のレベルは初期に比べてかなり上達しています。
でも選考を予想してウケがよさそうなモチーフを選んで書いているのかどうかわかりませんが
ちょっとどんぐりの背比べ的になってしまい、飛び抜けた作品が少なくなってきました。
もっと初期のころのような冒険的作品もぜひお待ちしています!

もうお忘れかもしれませんが、月間賞をとった作品の中から、さらに年間大賞を選出します。
みなさんは今までの受賞作品を読みかえしてみて、どの作品が有力候補かなんてことを考えながら
読みかえしてみるのもたのしいと思いますよ。


<受賞作品全文掲載>
太刀魚の塩焼き 雷鳥著

 明日の晩は何が食べたいと尋ねられたので、ハンバーグやエビフライと子供が好きなメニューを連ねてリクエストを送って見るものの、翌日の晩御飯はみそ汁と太刀魚の塩焼きだった時の残念感はどう表現すればいいものだろうか。

 楽しみにしてたのに……と怒って告げると、スーパーで安かったのよ、なんてさも当然と言った表情で返してくる母に、返す言葉など無く、銀色に照らされた身に箸を渋々通していた日々を思い出す。
 故郷瀬戸内の海では頻繁に太刀魚が取れるので、非常に安価で買えると知ったのは後の事だ。当時少年の身にすれば、晩御飯が魚だった時の残念感と言えば筆舌に語り尽くせないほどのものになる。
 刺身ならいい。だが鰈の煮付けや太刀魚の塩焼きといった淡白な味付けの一品が食卓に上ったともなれば、その晩の素っ気なさと言ったらどうだろうか。
 
 だが年を重ねていく内に味覚嗜好が変わっていくのか、不思議と子供の頃、あれほど嫌いだった魚を食べたくなってくるのだ。
 故郷から離れ、海の見えない山の土地に居を構えた今。
 ふと、あの日の頃が懐かしく思え、太刀魚の塩焼きを作ってみた。
 銀色に照らされた身を箸で一口摘まんでみる。
 ほのかな塩味と淡白な身の味わい。
 この味を懐かしく思え、上手いと感じた時。
 年を取ったものだと、感じるのだ。
 あの瀬戸内の海が懐かしく思えてきた。
 隣に居た息子が食卓に出された太刀魚の塩焼きを見て、あの日の自分を語っている。
 彼もまた年を取った時、同じ感情で太刀魚の身を摘まむのだろうか。
 そう考えると、なにやら微笑ましく思えてきた。
 親父もあの日の食卓で同じことを考えていたのだろうか。
 今度、電話で聞いてみる事にしよう……。


汚点 ラン太郎著

 俺は、小さな汚れを大きく大きく広げていくのが大好きだ。
 汚点を根気よくいじくり回すのが気持ちがいい。快感すら覚える。
 例えば絨毯にこぼれた一滴のインク。
 はじめは小さな点でしかないその汚れも、熱心にこすればやがてぼんやりと黒い領域を広げていく。
 じんわり、ねちねち、綺麗だった絨毯はどことなく陰気な影を帯びる。薄ぼんやりとした毛糸玉。ああ、なんて美し――もとい汚いんだろう。
 おや、その絨毯を犬が踏んづけてしまったぞ。
 犬の足が汚れた。肉球が黒ずんだ。大変だゴシゴシせねば。
 だが犬の足はいくら擦ってもあんまり見た目は変わらない。汚れが広がるどころか、むしろ綺麗になった気さえする。
 これではつまらない。ガッカリだ。
 と、思って犬の顔を見てみたら、なんと目の周りに目ヤニがいっぱいこびりついているではないか。
なんてこった。これは汚い。インクのシミなんて問題にもならない汚点だ。
 ゴシゴシしてやらねば!
 俺は犬の顔に親指を押し当て、力を込めて目の周りをゴシゴシした。
 ゴシゴシ。ゴシゴシ。
 ゴシゴシしてると、やがてどこからともなく血が吹き出てきた。眼球がつぶれたか? 犬は鳴いてる。喜んでいるのかもしれない。このマゾめ。俺も快感だ。
 ああ、擦れば擦るほどたくさん血が出てくる。傷口を広げていくうちに犬はいつの間にか鳴くのを辞めていた。
 もはや「傷口」というよりもちょっとした穴だ。俺は穴を掘っている。薄汚れた不潔な穴。
 掘っても掘っても溢れてくるねっとりとした汚れ。血。肉。その他、汚い。汚い。
 あああ、楽しい楽しい。これはやめられない――。

 実はこんな俺にも彼女がいる。来るモノ拒まず、去るモノ追わずが俺のモットーだ。
 天然ボケの可愛らしい彼女で、今日は二人で初デート。
 お好み焼き屋にごはんを食べに来ていた。
 適当なおしゃべりで盛り上がり、彼女は楽しそうにニッコリ笑う。
 その歯には青のりが汚らしく張り付いていて――
 俺はなんだかゾクゾクした。

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