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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第1回日昌晶掌篇文学賞 3月期選考結果発表

【金賞(3月期月間賞)】(副賞:740円ギフト券)
『黒い桜』『貝殻』 雷都

今回は甲乙つけがたい作品が並んだのですが、2作合わせ技ということで雷都さんに決定しました。
まず『黒い桜』なんですが一行目の出だしにやられてしまいました。
「桜の木の下には、梶井基次郎の死体が埋まってるんだって!」
こんなことが考えつくセンスには脱帽です。引用ではなくて本人が考えついたのであれば本物でしょう。
実際に前回2月期も銀賞を受賞しているので、実力的に優れていると認めないわけにはいきません。
てっきり梶井基次郎つながりで桜の木の下から檸檬(レモン)でも出てくるのかとも思いましたが
いい意味で裏切られて、きれいにまとまっていたのも印象的でしたね。

また『貝殻』は1行小説ですが、文句なしに秀逸です。詩的な情緒にあふれた繊細な小品でした。
今後の作品を期待しないわけにはいかないですね。

【銀賞】
『1.7秒』 add.

はっきりいって、ストーリー的には内容なんてほとんどないんですね。
それだけに文章表現が問われるタイプの作品ですが、独特のいいまわしに作者のセンスのよさを感じました。
やや技巧的に走りすぎ、くどく感じられるきらいもありますが今後を期待させてくれました。
この調子で今後はもっとストーリー性のある作品や奇想天外な設定の作品なども期待しています。

【佳作】
『戦闘員哀歌』 葉桜
『スプーンとぼく』 雪希
『出会いと別れは計画的に』 ドリーマー☆ユウ
『桜』2@
『サヨウナラの涙』4E
『毒リンゴ、コロン』 ミカ
『逃げる男』 01仁杉
(以上7作品、投稿順)

『戦闘員哀歌』は個人的に好きなジャンルですが、着目点はいいと思います。
この作品発表後、最近の仮面ライダーでも戦闘員視点のエピソードもありましたし。
もう少し文章に気を遣ってもらえると、より上位に食いこんでくると思います。

『スプーンとぼく』は題材的にはおもしいですよね。
ちょっと菊池寛の『恩讐の彼方に』を彷彿させるのかと思いきや、エロ方面なんですよね。
しかし最後の出世物語はやや蛇足で、最後までエロ青春路線だったほうが締まりがよかったと思います。

『出会いと別れは計画的に』もまた恋愛裏事情という視点にブラックユーモアのある作品でした。
ただ惜しむらくは「毒」成分がたりなかったので、すっと読めてしまうんですね。
もう少し読者を揺さぶるような、今回でいうと不快感をもたせる箇所があると、より引き立ったと思います。

『桜』は季節ものということもあるし、ちょっと変わった似非アウトローきどりな青春ものというのを
積極的に評価してみました。20年前まではこんなラブコメマンガも多かったですが
ここ最近では見られなくなってきたので、ある意味、リバイバルで狙い目かもしれませんね。

『サヨウナラの涙』は春だけに青春ものが多い中で、これもそのひとつです。
この場合は切り口を少し変えて、プレイパック風な仕掛になっているのと
設定が少女漫画的ではありますが、いつの時代にも女性の憧れる原風景となっているので
そこを要点をおさえて描かれている点を評価しました。

『毒リンゴ、コロン』は星新一の『未来いそっぷ』の一編を彷彿とさせるシニカルなユーモア作品で
屍体愛好者(ネクロフィリア)な王子様という設定は他でも見かけたことはあるのですが
あわせて歴史は巡るというかたちで終わらせるというのは、素直におもしろいと思いました。
銀賞候補でしたが、残念ながらいま一歩およばなかったのが惜しいところです。

『逃げる男』もまた銀賞候補でした。とてもおもしろい設定でいいとは思うのですが一点だけ、
物語のストーリーとオチがちょっとちぐはぐになってしまったかなという印象を受けました。
それは主人公の内面的な気持ちをもう少し丁寧に描いてあげると改善されたと思います。

《総評》
3月期はいつもとは反対に金賞銀賞候補には恵まれたのですが、佳作候補は意外と少なかったですね。
選考者の私の目が肥えてきてしまっているというのもあるかもしれませんが、
ジャンルやストーリーは異なってもスタイルが同じような作品がかなり増えてきました。
具体的には、叙述トリックの話ですね。最後の部分で主人公の正体がわかって
ストーリーの全体像がわかるみたいなスタイルの作品です。
悪くはないのですが、類似傾向の作品が増えると、どうしても埋もれがちになってしまい
特に出来の良いものしか目に止まらなくなってしまうので、佳作にしにくいところもありますのでご注意を。

そして4月、5月、6月と残すところ3ヶ月のラストスパートです。
最近は40作弱くらいの作品が安定してエントリーされていますので、100作品くらいでしょうか。
この中からグランプリが出してやるくらいの意気込みで、頑張ってほしいと思います!


黒い桜 雷都著

「桜の木の下には、梶井基次郎の死体が埋まってるんだって!」
 妹が僕の腕を引っ張りながら、元気よく言った。
「探しに行こうよ。モトジローの死体!」
 間違いを正す余裕もなく、僕は引っ張られていく。


 満開の桜並木を走った。数ヶ月前の災害で、花見は自粛ムードになっている。
 だが妹は我が道を進んでいく。
 気がつくと、山の奥へと侵入していた。
 草木がほとんど生えていない。
 災害によって荒れ果てた大地。
 振り返ると〈Keep out〉のテープが見える。
「帰ろうよ。桜なんてどこにも……」
 言いかけた僕の口が、止まった。
 生えていたのだ。
 真っ黒の、桜の木が。
 呆然とする僕に反して、妹は嬉しそうだ。
「これは死体が埋まっている色だね」
 はしゃぎながら、黒い桜の木の下を掘りだした。


「ほら、なんか出てきた!」
 僕は急いで駆け寄る。まさか、本当に死体か?
 しかし、妹が掘り出したのは数個のカプセルだった。
 中には戦隊シリーズのカードが入っている。
 どうやら、これはタイムカプセルらしい。
 妹はがっかりした様子だ。
 でも――。
「おかしい」
 僕はカードを見る。記載されている戦隊は、まだ未放送のものだったのだ。
 試しに他のカプセルも開けてみた。
 スポーツ新聞の切り抜き。
 ゲームソフトの箱。
 写真。
 どれも、未来の日付が記されていた。
「どういうこと?」
「これはきっと……未来からきたタイムカプセルだ!」


 僕たちはしばらく、黒い桜を見上げていた。
 妹を振り返り、告げた。
「梶井基次郎は死体が埋まっているといった。その真意は、精神の均衡のためなんだ。綺麗すぎるものに、グロテクスなものを対置することで、平静を保っていた」
 なるほどといったように、妹はうなずく。
「今回は逆だ。これだけ、禍々しい桜が咲き誇っている。きっとこの下には、これから、美しい思い出が、たくさん埋められていくはずだよ」
「うん。そうだね」
 僕たちはカプセルを埋めなおした。
 柔らかい土の上に、黒い花びらが舞い落ちた。


貝殻 雷都著

巻貝に耳を添えると、「もう……ここに海はないんです」と聞こえた。


1.7秒 add.

 僕が笑子に触れたいと感じるとき、1.7秒後の彼女が僕を拒まないという予見がある。
 〈放課後〉という弛緩した響きが、僕と笑子を言葉以上の理解で結び、誤差3文字未満の精度でそれを叶えてくれるのだ。
「なあに、山家くん」
 笑子は振り向いて言った。僕の手が置かれた彼女の肩は、とても細くなだらかだ。
 まだ彼女と手をつなぐことすら適わない僕だけれど、それよりも遥かに唇に近い肩に触れることは便宜上において比較的容易で、ほんの少し指を這わせればその憧れに触れてしまえる。
 実に曖昧な距離を隔てている。
 しかし、心ない僕の理性は、その距離感を愛しているようで……。
「ご、ごめん……なんでもないんだ」
 笑子は訝しげに首を傾げると、「そう」と一言つぶやいて、卓上にこぼれたオレンヂジュースのように廊下に染みわたる夕日のなかを抜けていった。
 放課後の学校は――僕にとって、それは橙色の魔性なのだけれど――彼女の姿をよりいっそう美しく装飾する。
 照らしだされた笑子の笑顔は、その名が体現するようにとても美しい。
 だから、僕はせめて妄想のなかで、思いつく限りの方法を用いて彼女を陵辱した。
 正体不明の焦燥と、有形に限りなく近い情欲にまみれ、比類なき至高の笑顔を捻じ曲げた。
 知らないことが許せなかった。あの笑顔が仮面であることを恐れた。すべてを開き、解体し、レポートを手に入れたかった。まるで、所有欲を堰き止める箍が決壊したかのように体内で氾濫し、それはやがて痛みに変換されたのだ。
 だから、僕は――よしんば笑子との隔たりが明確な巨壁となって相対することになっても――現実に彼女を襲いたいと思うかもしれない。
 そう、“かもしれない”。
 かもしれない、だ。“まだ”、そう思ったわけではない。
 まだだ。……しかし――。
 僕が笑子を壊してしまいたいと感じるまで、その間――。
 ――1.7秒。
 それさえ守れば、彼女は僕を拒まない。

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