L'Anovelién

UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

SEARCH

CONTENTS
LATEST
LINK
BOOKS

RSS
COUNTER

ライトノベル創作教室ラノベりあん 中二病でも書けるライトノベル教室♪

小説の楽しい書き方講座ブログ 毎週開催の創作塾と連動中!

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第1回日昌晶掌篇文学賞 4月期選考結果発表

4月期の応募作品の総数は38作品でした。
今回も力作が揃っていたので、選考が難しかったのですが発表いたします。

【金賞(4月期月間賞)】 (副賞:760円ギフト券)
『怪我』 ららこ

他の作品にはあまりみられない静謐な死を叙情的に描けているのを高く評価しました。
死の影をテーマにしながらも透明感のある物語は小川洋子作品を彷彿としています。
怪我や血の扱い方というか物語への織りこみかたもいいですね。
文字制限の関係で最後ちょっと黒猫の死に余韻をもたせられず
やや急ぎ足で唐突になってしまっているところがひっかかりましたが
作品をとおしての評価を下げるまでもないでしょう。

【銀賞】
『日常』 雷都

今回も読む者の創造力をふくらませてくれる一行小説となっています。
雷都さんはコツをつかんだ感じでしょうね。
この感覚を掌篇だけでなく中篇、短篇へとつなげていってほしいと思います。
ちょっとライトノベルとは違う方向性なのですが、いけるんじゃないでしょうか。
もうひとつの応募作だった『続・七福神』もよかったのですが
こちらは反対に掌篇や短編ではなくてライトノベルの長編向き設定でしたね。

【佳作】
『レンズ越しの世界』 金色のミヤ
『坂道をカケル』 森野参太
『ソファ』 回遊魚
『愛猫家と猫娘』 add.
『君と見た桜』 2@
『群集。駅前』 01仁杉
『日常』 ざぼん(仮)
『散歩』 くろま
『たくさんのはじめて』 4E
『友達が欲しかった』 蘭丸
(以上10作品、投稿順)

『レンズ越しの世界』は眼鏡というガジェットの選び方と描写がよかったです。
ただしストーリー的には眼鏡である必要がないところが惜しかったですね。

『坂道をカケル』はそれほど奇をてらったストーリーではないですがテンポがよく
とても読みやすかったです。オチをもう一段加えるともっとよかったかもしれません。

『ソファ』はストーリーはないに等しいのですが、なんでもないことを書くという
作者の姿勢を評価してみました。極めれば吉本ばななの『キッチン』にもなれるでしょう。

『愛猫家と猫娘』はコミカルでいて、教師視点から描くおもしろさがありました。
惜しむらくはオチがありきたりで少々陳腐な読後感になってしまったところです。

『君と見た桜』は回想と風景と写真の二重露光のように重ね合わせて
描けているいるところが佳作ですね。

『群集。駅前』は実験的手法ながら現代のツイッター的な断片的情報もあって
うまく成立させていました。シニカルなところも高評価です。

『日常』はちょっと作家の内輪ネタっぽいところはありますが、
作家の悲喜こもごもを短い文章で表現しえていました。ちょっと詩に近いですが。

『散歩』は日常の一コマを描き、読者を元気にしてくれるような雰囲気を評価しました。
どうしても暗いトーンの作品が多いと、こういう爽やかな作品は清涼剤のようもでもありました。

『たくさんのはじめて』は願望的妄想がストレートなところを評価しました。
こんなことが起きるわけがないとはわかっていても期待してしまう男心をよくつかんでますね。

『友達が欲しかった』は結構多い死に神モノでもアレンジ的に異色でしたね。
ややテーマがぼやけてしまったところがなければもっと上にいったでしょう。


《総評》
新年度ということで、こちらのほうでも初投稿者の健闘が目につきましたし
常連投稿者の底堅さも垣間見れたりして、なかなか興味深かったです。
他の投稿者との相乗効果で全体のレベルは右肩あがりでよくなってきています。
これからも頑張ってほしいと思っていますので、よろしくお願いします。

評価するのも悩んでしまうのですが、ここに来て特にどうしようかと思っているのが
いわゆる小説というよりも詩に近い作品なんですね。
たしかに掌篇小説の体裁というものが、きっちりしているわけでもなく
それでいて散文詩というのもありますから境界はすごく曖昧となっています。
なので、ちょっと詩的であっても、それを理由に評価しないようと思っています。
ただし詩的な作品の中には物語性が薄く、テーマも漠然としてしまっていて
詩としても評価しきれないものがあるので、そこだけは注意してほしいですね。
美しい文章を抽象的に書くのではなく、伝えたいことをわかるように書くことに
意識をそそいで、これからも執筆してもらえたらと思っています。


怪我 ららこ著

 私は怪我が嫌いだった。
 包丁で手を切る痛みも、針で指を突き刺す痛みも、転倒して膝を擦り剥く痛みも、全部。

 ある夏の日のこと。台所に立っていた私は、ふとした拍子に包丁の先で指先を数センチ切り裂いてしまった。
 左右に割れた皮膚の間から赤い液体が滲み、小さな玉を作ってから皮膚へ伝い落ちていく。痛みがじんわりと指先を覆い、私の涙腺を強く刺激した。
 とにかく流れ落ちる血を止めたくて、私は手にした布で指先を強く圧迫していた。痛みはなかなか引かないし、布は赤く染まっていくばかりだった。
「痛いの?」
 不意に右隣から幼い声が響いた。
 思わず振り向く。その先にあったお皿や箸が洗いっぱなしになっている流し台の上に、声の主である黒猫は優雅に座り込み、しなやかな尾をゆらゆらと左右に揺らしていた。
「痛いの?」
 抑揚のない声が響く。指先の痛みに耐えきなかった私は黒猫に向かって叫ぶように訴えた。
「痛いよ、痛い。ねえ、モモ、私の怪我を治してよ」
 指を流れ落ちる血の量が減っていたことに、その時の私は気付かなかった。モモに対して憤るばかりで、怪我が治す魔法なんて現実にないことを思いだせなかった。
 しん、と、台所に静寂が満ちる。
 私はモモの次の言葉を待っていた。
「痛いの?」
 投げつけられたのは変わらぬ一言。
 そして私は、指先の痛みが薄らいでいることに気付く。


 結局、怪我を治したのは時の流れだった。魔法も包帯も必要なかったのだろう。
 私は頭上を覆う夕暮れに目を向けてから、次に足元へ視線を落とした。モモと書かれた小さな墓を撫でた私の皮膚を、すぐ側に生えていた野草の葉が薄く切り裂いた。
 思わず手を引っ込め、傷口を押さえる。ずきり、と走った痛みに、私は思わず頬を緩めた。
 あの日、モモは私に問いかけた。
「痛いのは一瞬なのに、どうして泣くの?」と。

 もう一度、空を仰ぐ。
 黄昏の色はどこまでも遠くまで続いていた。


日常 雷都著

「なにか珍しいことないかなぁ」と、今日も空飛ぶ豚に相談する。


Chechttp://lanovelien.blog121.fc2.com/blog-entry-472.htmlk
関連記事

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://lanovelien.blog121.fc2.com/tb.php/472-bb8c427d

HOME
広告:
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。