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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第1回日昌晶掌篇文学賞 5月期選考結果発表

さて、だいぶ遅くなってしまいましたが5月期の結果発表です!
5月期の投稿作は35作品でした。
今回は特に選考に悩みましたが、結果は下記の通りとなりました。

【金賞(5月期月間賞)】 (副賞:700円ギフト券)
『執念』 古都たん

ホラー作品です。これまでもホラー作品は多かったのですが、今月は投稿作も多くて
ホラー作品が豊作のときでしたが、その中でも直接的に恐怖が書かれているのではなく
読了してから読み解いて、じわじわと恐怖を感じるタイプなのが特に印象的でした。
掌篇という短い文章の特性をうまく利用していたと思います。


【銀賞】
『秘密基地』 雪希

幼い日のなんでもない情景をきれいに描いていて好感が持てました。
しかもオチもしっとりと決まっていて心地いいんですね。
せりふの関西弁も情感を豊かにしてくれていて効果的です。
欲をいえば、ちょっと冒頭部が技巧的になりすぎたことで頭でっかちになっているので
もっと軽快な文章表現にしたほうが全体の雰囲気にあっていると思います。

【佳作】
『桜の森の満開の』 KAIN
『ラブ&ピース』マブ
『新しいフォルダ』 ポニィ。
『剣はパンに、鎧は鍋に……』 金色のミヤ
『・・・』 守安
『叫び』 01仁杉
(以上6作品、投稿順)


『桜の森の満開の』にはやられました。アイデアが秀逸でしたね。
いわゆるメタ小説というもので「入れ子構造」になっているんですね。
作中の視点は、この日昌掌篇文学賞の投稿者(読者)なのです。
さらに坂口安吾の『桜の森の満開の下』と3月期の金賞受賞作の『黒い桜』
および梶井基次郎の『桜の樹の下には』の3作品をかけています。
しかも選者の私が純文学のオマージュ作品を高評価するのを喝破していて
そのことに対して皮肉まではいっているんですから、もう脱帽です。
ですが一般読者には少々わかりにくいので、申し訳ないですがキンショウではないです。

『ラブ&ピース』を評価したポイントは、ちょっとうがった視点であることと独特のテンポです。
飄々とした感じがすごく自然に読ませるんですよね。
ただし結末が若干わかりにくいので、書き方を含もう少し工夫してもらって
全体を引き締めてもらえていたら上も狙えたかもしれません。

『新しいフォルダ』は今月のホラー作品のなかでも秀作となっています。
同様の題材としては古くから怪談にあるのですが、得体の知れない相手の見えない恐怖を
コンピュータのモニターのみを舞台にして描ききっているところなんかは
小説という媒体を巧妙に活かした演出となっていました。

『剣はパンに、鎧は鍋に……』はファンタジー作品の裏側の非情さが描けていて
しかも悲惨な話なのに童話的なトーンで語られているギャップがとてもよかったです。
掌篇小説ではなかなかファンタジー色の強い作品は世界観説明が充分にできないので
かなり不利になってしまうのですが、この作品では読者の既成概念だけの知識だけで
理解できるようになっているわけですが、なかなかできることではないですよね。

『・・・』はコミカルな作品ですが、これもメタ小説になっています。
コンセプトの発想自体は古くからあるのですが、今回のようなオチはおもしろいですね。
ちょっと世相を反映して社会風刺が加味されているところなんかも評価しています。
星新一の『未来いそっぷ』を彷彿させていて、個人的に好きな作品です。

『叫び』は5月期にホラーが多いなかで、ストレートなホラー作品のふりをした
コメディ作品ということで、意表を突いた感じがすごく印象的でした。
惜しむらくは会話だらけになってしまっているので、もう少し文章を工夫してもらえると
もっとわかりやすくなって上を狙えたと思いますので、今後もがんばってください。

《総評》
夏でもないのにホラー作品が本当に多い月でした。
そういえば冬はやたらと人が死ぬ、殺される話が多かったりということもありましたね。
季節によって投稿者の傾向が気持ち的に変化しているのでしょうか?
とっても興味深いテーマなので、今後も年間を通して注意してみたいですね。
すぐに6月月間賞に年間大賞の選考にも追われていますが、本当に選考が難しいので
日数がかかってしまうので、遅れがちなのは大目に見てやってください。
短い文章を書く練習は、そればっかりやっていてもしょうがないのですが
身につけたものは、ぜったいに長編にも活きてきます。
たとえば無駄なシーンや会話をぐだぐだ書いてしまうことがなくなり
自然と作品がひきしまって格好よく、しかも読みやすくなったりとかですね。
今後もみなさんの作品に期待していますので、よろしくお願いいたします!


執念 古都たん著

 彼女が亡くなった。
 飛び降りだったそうだ。
 遺書は無かったという。
 だった、と言うのは彼女の死を人伝に聞いた為である。
 私は彼女の遺体を見たくなかったのだ。
 彼女が居なくなった事をどうしても認めたくなかった。

 気付いてやれなかった自分を何度も責め続けた。
 仕事も上手くいっていた様だし、家族や友人関係でトラブルも無い…とも言えないか。
 彼女の事なら誰よりも、何でも知っていると自信があった。
 しかし現に彼女は私に黙って死んだ。
 もしかしたら私の知らないところで何かあったのかも。
 彼女は優しすぎる性格だから、きっと私に心配をかけたくなかったのだろう。
 死んでしまうくらい辛かったんだ。
 私がもっと早く気付いてやれていればこんな事態にはならなかったのに。
 幾ら後悔しても全て後の祭りだった。

 訃報の三日後くらいか、変な事が身の回りで起こるようになった。
 物が別の場所に移動していたり無くなっていたりと本当に些細な事だが、私は絶対に彼女だと確信した。
 間違いない。
 彼女は死んでからも、私の側にいてくれているのだ。
 そう思うと嬉しくなった。と、同時にやる気が出た。
 また彼女と話したい。
 気付いてやれなかった事を謝りたい。
 どうして私を置いて死んでしまったのか、聞きたい。
 そして、彼女を苦しめた奴を、知りたい。

 それからの私は実体の無い彼女とコンタクトをとろうと試みていた。
 馬鹿馬鹿しいと思えるような後霊術や死者を蘇らせる魔術なんかにも手を出してみたが、成果は一つとして得られなかった。

 行き詰まった私は乗り気ではなかったものの、藁にでもすがる思いでその道の専門家に頼むことにした。
 イタコ、という後霊術専門の職業らしい。
 これでようやく彼女と話せるのか。

 ・ ・ ・

 初老のイタコは小さな体をカタカタと震わせ、俯き加減で小さく呟いた。

「―貴方は、誰?」

 あぁ、なんだ。
 こいつもインチキか。


秘密基地 雪希著

 鬱蒼とした葦の密林を抜けると、そこは楽園だった。
 ざわわ、と青嵐が駆けていく。
 時折そよ吹く薫風が鼻腔を擽る。
 綺羅綺羅と万華鏡の様な水鏡の煌めきに誘惑され河面を覗く。
 小魚やザリガニが驚き慌てて身を隠した。
 そんな水面下の騒動など意にも介せず水黽がすいすいと滑り行く。
 遠い日の宝物に出会ったような感覚に懐かしさを覚え瞳を閉じ深呼吸。
 肺が、むっとした青々しい草いきれに満たされた。
 背の高い葦の森の中心にぽっかりと空いたこの場所は、世界から隔離された秘密の箱庭のように静謐で時間の流れがゆったりと流れているように思えた。

「おっさん、何しとん」
 惚けていた私は甲高い声で現実に引き戻された。
 おっさんと言う言葉に憤然としながら振り返る。
 そこにはよれたTシャツに短パンを履いた少年がいた。
「ここはわいの秘密基地や、出てってや」
 そう言われてよくよく周囲を見回してみる。
 薄汚れた虫網、穴の空いたバケツ、枝に凧糸を結んだ手製の釣り竿。
 来た時には気にも止めなかったが、なるほど子供の宝物が溢れていた。
得心がいき顔が綻ぶ。
 私も昔は秘密基地を拵えたものだ。
 潮風にざわつく松林を抜けて、浜辺の端に鎮座していた灰色の城壁。
 テトラポットの隙間を縫い、秘密の場所を求めて探検したのを覚えている。
 しかし残念な事に私は大人になった。
 心を鬼にしなければならない。
「河川工事で危険な場所になるから此処で遊ぶのは止めて欲しいんだ」
「嫌や、わいが先に見つけたんや!」
 少年には残酷な正論は感情論の即答で打ち消された。
 私は考えた。
 少年を追い払っても、男の帰巣本能がこの場所へと戻らせるだろう。
 それではただのイタチごっこだ。
 そう言えば私の時はどうして諦めたのだろうか?
 そう、確か
「『秘密』基地は誰かに知られた時点で秘密じゃなくなるんじゃないかい?」
 こうだった。
 悔しそうに私を睨みながら少年は駆けて行く。
 新しい基地を求めて去るその背を、私はいつまでも見送った。

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