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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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第2回日昌晶掌篇文学賞 7月期選考結果発表

この記事を書き終えた直後に全データが消失……こういう日もありますよね。
第1回のグランプリはまだ選考途中です。もう少し時間をください。
その前に第2回の最初となる7月期の発表です。

【金賞(7月期月間賞)】 (副賞:600円ギフト券)
『幻肢痛より愛をこめて』 雷都

すでに常連となった雷都さんの作品は安定感がありますね。コツをつかんでいるのでしょう。
着想がおもしろく、読者の興味を惹くのが巧いです。
そしてオチのまとめ方もよかったですね。まるで掌篇のお手本のような作品でした。


【銀賞】
『不和回廊』 鳩

こちらも読者を惹きつける力は負けていませんでした。
謎めいたストーリーも巧く処理して描けていました。
ただ一点だけ、銀賞となった理由は最後のオチがやや強引な展開でした。
前半の強引さは気にならないものですが、後半の強引さって結構、気になるものです。
そこを改善してもらえれば金賞になったかもしれないほどの作品でした。


【佳作】
『紙飛行機』 ジャイ
『渡し賃 ~三途川の渡し賃~』 KAIN
『*幸せになりたいウサギ*』 x
『孤独』 雷都
(以上4作品、投稿順)

『紙飛行機』は、青春の一コマを紙飛行機というガジェットを使って巧みに描けていました。
惜しむらくはもう少し主人公の心情を掘りさげてもらえると、さらに高く評価できたと思います。

『渡し賃 ~三途川の渡し賃~』は、人情ものというんですかね。
滑稽話のようでして、ほろりとさせるところもあって、いい塩梅になっています。
ライトノベルではないのですが、こういう作品を書ける人は少ないので頑張ってほしいですね。

『*幸せになりたいウサギ*』は、最初は絵本のものがたりのようでいて、
オチになるとちょっと考えさせられる展開になっていたのは、いい意味で裏切られる作品でした。
もう少しオチにメリハリをつけてあげると、もっとよくなったと思いますよ。

『孤独』は、金賞受賞作との同時投稿なのですが、一行小説もよかったです。
一行小説のキモは読後にどのくらい読者の想像を掻きたてるかにありますが、その点よく書けていた秀作でした。


《総評》
日昌晶掌篇文学賞も2年目となりましたが、全体のレベルもアップしてきたので
こちらとしても、あまり注文をつけることがなくなってきました。
そのまま各自の個性を活かした作品を書き続けてもらえたらなと思っています。
そして入賞作品も多くなってきたことですし、受賞傾向を研究するということではなく
すなおに受賞作品を鑑賞してみることをおすすめします。
秀作ぞろいですので、読むだけでも、いろいろ気付かされて実力がアップするでしょう。
それでは来月以降も力作をお待ちしています。


《受賞作品全文掲載》

幻肢痛より愛をこめて 雷都

 五体満足に見えるあたしだが、元・千手観音菩薩であるため幻肢痛に悩んでいる。
 今はこうして俗世に紛れ女子高生稼業なんぞをしているが、むかしは人々があたしに平伏し、四十ある腕で二十五の世界を救うと崇められていたものだった。
 しかし、大和撫子ですら足でタマを転がすご時世に、瞑想するだけの観音菩薩は時代遅れだとされて、あたしはリストラされた。
 腕を切り落とされ、人の身として暮らすはめになった。

 はじめは戸惑ったものの、女子高生の営みも、悪くはない。
 人界とは愚かな場所だと思い込んでいたが、人間も悪い奴らではないことがわかった。
 特に、クラスの委員長。彼などは見どころがある。
「きみ。痛そうな顔してるけど、大丈夫?」
 転校してきたばかりのあたしを気遣ってくれる、自愛に満ちた男だ。
「実はな。あたし……」
 かつて千手観音であったことを伝えると、驚きはしたものの、彼はすぐに受け入れてくれた。
「移植、できるかもしれない」
「本当か?」
「うん。今の医学ならね……」
 彼は滔々と、最新の医療技術について語った。

 委員長の目標は医者になることだった。
 未来を語るとき、彼の目はこの世のなによりも輝く。
「僕は、ひとつでも多くの命を救いたい」
 ふむ。
 立派だ。
 二本しかない腕では世界を救うなんてとても無理だが、たった二本でも、人の命ならば救えるはずだ。
 などと、感心していたら。
 幻肢痛が再発した。
 失われた三十八の腕の痛みに、顔が歪んでいたのだろう。
 心配そうに、彼が言った。
「僕には、腕が四十本あった人の気持ちは、わからないけど」
「そうだろうな」
「お互い、がんばろう」
 そしてあたしの二つの手を握った。
 不思議な、感覚だった。
 彼に手を握られていると、あたしは幻肢痛を忘れることができた。
 やはりこの手には、人を救う力があるのだ。
「移植は、しなくてもいい」
「諦めちゃダメだ」
「そうじゃない」
 彼の目を見つめながら、告げた。
「あたしは、新しい腕を、見つけたんだ」


不和回廊 鳩

 下校の足取りは、今日も重い。どこのクラスにでも冴えない奴がいるが、それが僕だ。
 団地の宅配ボックスに膨らんだ封筒が入っていた。『川野裕様』。僕宛だ。製薬会社のロゴの横に『試供品』と書かれている。
 誰もいない家に帰宅して、すぐに封筒を開ける。中から、紙と栄養ドリンクが出てきた。
 紙には『先日はアンケートにご協力ありがとうございました。こちらは中学生向けに作られた栄養ドリンクです。ぜひ、その効果をお試しください』というようなことが書かれていた。確かに、最近どこかでアンケートに答えたような気がする。
 僕は、それを一気に飲み干した。かっと体が熱くなったかと思うと、押し寄せた波が一気に引くように血の気が引く。とうとう立っていられなくなって、その場に座り込んだ。
 どれ程の時が経っただろう。体が軽くて心地がよい。両手を開いたり閉じたりしてみる。異状は無い。
 不思議な感覚だった。なぜか僕は家を飛び出し、学校へ向かった。
 すると、サッカーの授業が行われていた。さっきは一度もボールが回ってこなかったが、今度は何点も決めた。次は、テストの返却。さっきは平均点以下だったが、今度は100点。クラスの皆が讃えてくれて、女子から「今度勉強教えて」なんて言われてしまった。
 ふと気付いた。不登校の加納がいる。派手な女子に混ざって談笑している彼女と目が合った。
「いいでしょ。この世界」
 瞬間、皆が一時停止のように動かなくなった。加納と僕だけが動いている。
 笑う加納を見て、ここにいてはいけないと悟った。帰りたい。
「馬鹿ね。ここにいたほうが幸せなのに」
 加納の制止を振り切り、僕は帰った。
 気が付いたのは、病院のベッドの上。聞いた話によると、煮詰まった大学生が製薬会社を騙り、どこかで得た個人情報を使い、数名の中学生に栄養ドリンクと偽って毒入りの瓶を送りつけたそうだ。
 被害者は僕を含めて6人。加納は、帰ってこなかった。

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