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UNO=日昌晶

Author:UNO=日昌晶
日昌晶(ひよしあきら)
小説家にして作家デビュー請負人、ストーリーコミュニケーションコンサルタント
原稿執筆や講演・講義、オタクビジネス・マーケティングのコンサルティングまで幅広く活躍中!
 unokyokai@gmail.com

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読者対象別ヒーロー像考(大人向け作品編)

連続シリーズの第3回目となりました。
少年向け作品編、少女向け作品編とつづいて、今回は大人向け作品編です。

大人向けといっても、実は過去2回で考察してきたヒーロー像と大きく変わらないんですが
特に男性向けであっても、少女向け作品でのヒーロー像に近いものが好まれる傾向があります。
なぜかというと、大人向け作品の主人公というのは、やっぱり大人なわけですから
すでに成熟している場合が多く、たいていは何らかのエキスパートとしての実力を持っているのです。
だから少年向けのような成長物語のような展開にはなりにくいんですね。

大人向け作品のヒーローと少年少女向け作品のヒーローとの差異はというと
その第一は、いちおう地に足のついた設定ということが挙げられます。
ライトノベルに見られるような突飛だったり、ありえなさすぎな設定というよりも
実際にいるんじゃないかと思わせるだけのリアリティのある設定なんですね。
ヒーローの特殊能力というのもファンタジー的でもなければSF的でもない。
なので格闘技などが強いとか、射撃など武器の扱いに長けている、または天才的な頭脳の持ち主など
実際にはありえないような活躍、天才ぶりを発揮してくれるわけですが、ベースとなるものはしっかりしてます。
そしてミステリー小説や推理小説では、必ずといっていいほど人が死ぬ展開になるので
必然と関わり合うために刑事などの警察関係者や私立探偵、素人探偵という設定が多くなりがちです。

さて、大人向けと一口に言っても幅広いので、今回は大人向け作品の代名詞でもあるハードボイルドについて
いくつか考察を加えてみようと思っています。
ハードボイルド作品そのものに関しては、自身もハードボイルド作家として有名なパーカーの
『ハメットとチャンドラーの私立探偵』という論文を書籍化したものがあるので、
絶版のようですが、図書館などで、ぜひそちらを読んでいただきたいと思います。

そういうことで少年少女向けと大人のハードボイルド作品の最大のちがいはなんだろうと考えると
それは如実にクライマックスにあらわれてくるんですね。
少年少女向け作品というのは、カタルシス、爽快感、勧善懲悪といったかたちで
以下続巻というシリーズものであっても、悪い敵は倒されるし、主人公はきちんと目的を達成します。
ところがハードボイルド作品というのは、ここはちがうんです。
悪い敵は必ずしも倒されるとは限りません。事件は一応解決はしても、根本が解決しない場合もあるのです。
最も有名なチャンドラーの想像した私立探偵フィリップ・マーロウさえも巨悪に立ち向かうことはありません。
警察とマフィアが癒着していようと、警官を騙るマフィアに自分が追っていた容疑者が殺されようと
マーロウは完全と悪と戦うことはしません。それを仕方ないことと諦めるのです。
彼はまた犯人が警察に掴まり、裁判を受けて正当に裁かれることも望んでいませんし、
ダーティ・ハリーよろしく撃ち殺そうとも思っていません。
彼はひたすら哀れな依頼人の希望を最大限に叶えようと努力するだけです。
それはけっして大衆的な社会正義にのっとった行動ではないのです。

そうなのです。ハードボイルドのヒーローは、自分を取りまく社会が悪で満ちていることを熟知しています。
だから無闇に悪を懲らそうなどとはしません。
悪は社会に深く根づいているため、私立探偵ひとりが何をしようと変わらないことを知っているのです。
知っていながらも、自分の周りの悪に対しては敢然と立ち向かい、守るべきものを守るのです。
守るべきは哀れな人々であり、自身の誇り高き矜恃なのです。
最近ではドラマ『相棒』でも、犯人が捕まり事件は解決しても、
警察上層部によってうやむやになってしまったりするなんて展開もありますよね。
そこで右京さんは必ずしも根本的な解決策ではないながらも、自らの矜恃を貫くために
官僚組織の弱点や矛盾点を突くかたちで、ちくりと一刺しすることになるわけです。

つまり、たびたび無謀な行動を起こす少年向けヒーローとは一線を画しているわけです。
少年向けヒーローは世界規模の巨悪に対しても、ひとりで立ち向かい戦います。
ゆえに少年の運命は世界の運命と共鳴することになり、セカイ系となるわけです。
しかし、ハードボイルドは世界と自分に越えられない壁があることをしっかり認識しているだけに
自分の手に届く範囲のことについては死を賭しても守り抜こうと戦うことになります。
卑しい町中にあっても、穢れることなく気高く生きる騎士というイメージこそが
ハードボイルド作品の持つイメージとなっているわけです。

少年向け作品がセカイ系に向かいやすいのに対して、大人向け作品が非セカイ系となるのは
このようなヒーローが立ち向かう敵の本質のちがいに最大の理由があるのですね。

さて、あなたの描くヒーローはどこへ向かって歩きだすのでしょうか?
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